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「心をコントロールする」
長野県・護国寺住職 杉田寛仁

 心のひとつの特徴は、何でも自由に考えられるということです。自由に考えている心の中味は誰にも分かりませんが、ずっと考えていると、やがて振る舞いや仕草、表情に現われてくるという法則のようなものがあります。
 何でも自由に考えられるというのは、非常にすぐれている力です。その力を善いことに使っていけば、人はみな幸せになっていけますが、悪いほうに使っていくと、世の中が荒れすさんでいくでしょう。
 方位をはかる磁石は、どこへ向けても北を指します。北を指すまでは左右に大きく揺れますが、いったん北を指し示すと、その場に落ち着いてあまり乱れません。
 私たちの心はどうでしょう。磁石が北を指すのを、心がいつも正しい考えを持っているとすると、左右に大きく揺れている状態は、つまらないことを考えたり、不平に思ったり、怒りを抱いては相手を怨んだりそしったり、あるいは感謝ができなかったりする心の状態をいいます。
 これも心の自由な思いですが、磁石がちゃんと北を指していないと、正しい方向に進めないように、私たちも心の赴くままに行動していると、決して幸せにはなれません。
 最近、自殺とか殺人の報道をよく耳にします。今年六月に起こった東京、秋葉原の通り魔事件も、心が大きく揺れて動き、正しい判断ができない状態であったからです。
 他人の言った言葉に心が乱れ、他人の行為に不平を思って心が乱れ、自分の思うようにならなくて心が乱れる。あるいは自分の至らなさに心が乱れ、病気になっては心が乱れるものです。この心の乱れを穏やかにさせて、何が正しい自分であるかを見据える自分を作っていくことが必要です。自由に赴く心を、この自分が主(あるじ)となってコントロールしていける自分をつくっていくわけです。
 ヤンキースで活躍している松井がかつて、ゴロ王などとマスコミでたたかれていたとき、松井は「人の書く記事のことなどは僕のコントロールできることではない。自分がコントロールできることを、しっかりやっていく。それが僕のスタンスです」というようなことを言っていました。名言です。
 このように自分の自由になる心を、いつも正しい方向に向けていけるようコントロールしていける。そんな自分を作っていくことが大切です。

掲載月 2008/07


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