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大震災……心に染みるエピソード

岐阜県・小山寺住職 中西東峰


 

  先ず、この度の東日本大震災において被災された皆様にお見舞を申し上げますとともに、残念ながらお亡くなりになられた方々のご冥福を衷心よりお祈り申し上げます。

 先日、中日新聞編集局デスクにこんなエピソードが紹介されました。

 子どもがお菓子を持ってレジに並んでいたけれど、順番が近くなり、レジを見て考え込み、レジ横にあった募金箱にお金を入れて、お菓子を棚に戻して出て行きました。店員さんがその子どもの背中に向けてかけた「ありがとうございます」という声が、震えて居した。

この子の迷いをふっ切った勇気ある決断はすばらしいですし、更に、物を買わなかったお客さんに涙をこらえて深々とお礼の言葉をかけた店員さんも、またすばらしい。今できることを精一杯。二人の温かい気持ちに貰い泣きをしてしまいました。
 三ヶ月近くが経ち、いよいよ前向きに歩き始めた人々から、ようやくあの日の出来事が話されるようになりました。そのいろんなエピソードは知人にはもちろん、他人への思いやりに包まれていて、こんな時だからこそいつもの何杯も何杯も嬉しいのです。東日本大震災は跡形も無いほどに多くのものを奪っていきましたが、この日本の優しい人々から、思いやりの心までは奪えませんでした。むしろこの悲惨な体験をバネにして、さらに高い心のステージに立つ人々に感動し、すこしばかりの安堵を覚えています。

お釈迦様は、あらゆるものと向き合う方法として「四摂法(ししょうぼう)」の教えを説かれました。

布施摂法―みんなで幸せになれるよう、喜びを与えましょう
愛語摂法―みんなで幸せになれるよう、優しい言葉で語り合いましょう
利行摂法―みんなで幸せになれるよう、心のこもった助け合いをしましょう
同時摂法―みんなで幸せになれるよう、人の身になってつくしましょう

 「闇は深ければ深いほど光は光る、光は光によって光る」と論されます。満たされていた時には気づかなかったもの、幸せな時には見えなかったものに、今、私たちは気づきました。今こそみんなで幸せになれるよう、お釈迦様の四摂法をポイントにこの大災害に向き合っていこうではありませんか。一日も早い復興を祈って……。

掲載月 2011/06


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