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「−日日是好日− 雨は嫌われもの?」
福岡県・道林寺住職 貝野 孔隆

 毎年、梅雨時期になると皆口々に「嫌な時期になりました」と言います。梅雨時期だけではなくいつでも雨が降ると「今日は天気が悪い」と言いますが、雨はそんなに嫌われ者なのでしょうか?
 そう言う私も数年前までは、雨が降ると天気が悪いと思っておりました。しかし、この事が間違いであると気付いたのは、環境の変化でした。幼い頃より福岡に移住するまでの間、大きな河川や琵琶湖と云う水瓶のお陰で、水に不自由を感じた事は有りませんでした。しかし、福岡には大きな河川も水瓶もなく、空梅雨の年には渇水被害に遭うのです。
 ですから、福岡に来てからは梅雨時期に雨が降ると「ああ、今日も雨が降ってくれた」と思うようになったのです。
 元南禅寺派管長の勝平宗徹老師は、「日日是好日」についてこんな話をされました。「人から墨蹟を依頼される時、よく頼まれるのが「日日是好日」である。何故この字かと尋ねると、たいていの人は「毎日が好日とは有り難い」と言われる。しかし、皆さんは本当に毎日が好日と思われますか?楽しい日もあれば悲しい日もある、晴れの日もあれば雨の日もある。たとえ雨の日であっても、あぁ今日は滅多に無い雨の降る南禅寺に御参りが出来た……と受け取る事が出来たならば、雨の日も好日となる。毎日を好日と受け取る為には、そこに感謝の心が無くてはならない」と、いわれました。
 空から降ってくる雨は京都も福岡も同じ、降った雨を感じ取るのも同じ私。しかし、環境の変化によってその感じ方は全く正反対のモノになったのです。
 我々はついつい自己の物差しでモノを見て、善悪を決めてしまいます。しかし、モノには善悪など初めから無いのです。そう思うのは我々に執着があるからです。執着を無くし、今日は誠に善い日であったと感謝する事が出来たならば、その日その日毎日がそのままに好日となるのです。

掲載月 2008/07


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