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京都府 ・霊源院住職  雲林院宗碩
  

 境内のソメイヨシノが見ごろをむかえ、建仁寺は多くの参拝者に御来山頂いております。その中で、「今年のNHK大河ドラマの主人公である新島八重さんが建仁寺で修行されていたのですか。」という質問を受けることがあります。八重さんは、キリスト教系の同志社大学を創立された新島襄氏の夫人で、クリスチャンでした。その八重さんが、建仁寺の五代前の管長、竹田黙雷老師について禅の修行をされておられたのです。八重さんが40歳から70歳までの30年間、毎日建仁寺に来られて坐禅とお茶の稽古をされていたといいます。
 ある時、黙雷老師と八重さんが高台寺で桜の花見をしておられた時、老師は『今日はヨーロッパの神様と花見じゃな』と言われたといいます。西洋の神様も東洋の神仏も皆平等に尊いのだということでしょう。
 この教えを禅の世界では『平等即差別』と申します。禅では“差別”を“しゃべつ”と読みます。分かり易く言えば 水は凍れば氷になり、蒸発すれば蒸気になりますが、形は変わっても、元は一つ、H<small>2</small>O 。しかし、この水の中に氷を入れて飲んでみてください。水だけで飲むよりも、氷だけで食べるよりも氷水で飲む方が皆様の乾いた喉を潤し、何倍もおいしく感じます。違うもの同士、お互いを認め融合し合う時、一足す一が二ではなく、何倍にもなる、これが『平等即差別』の世界であります。
 また、この教えについて、栄西禅師は〇△□の形で表したという伝承が残っています。形は違えども元は一つ、〇が臨済宗、△が天台宗、□が真言宗と解釈され、お釈迦様の尊い教えに変わりはないということです。今ここに禅師がおられたならば、○が仏教、△がキリスト教、□がイスラム教と説かれたかも知れませんね。世界中の人々が幸せになることを願ってやむことなく、お互い違ってそれでよし、皆、神仏より尊い命を授かり活かされているのですから。
 ここで禅問答!! 〇が黙雷老師、△が八重さん、では□は如何に。それは、あなたです。どうぞ、この『平等即差別』の教えを日常の生活で働かせてください。我が子や旦那様、奥様を誰かと比べることなく、それぞれの素晴らしいところを見つけましょう。
 最後に、来年は日本で臨済宗の本山を最初に開かれた建仁寺開山千光国師明庵栄西禅師が亡くなられて800回忌を迎えます。日本臨済宗祖への報恩感謝の御心でお参り頂きたく願っております。

掲載月 2013/04


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