広島県 ・観音寺副住職 木村宗鳳 |
五月下旬には、お寺の境内のヤマアジサイが開花いたします。このアジサイは日本原産の植物で、世界に紹介され様々な品種が生まれました。 これは、お寺の檀家さんのお話です。ある日、檀家さんがお寺に来られおっしゃいました。「両親は早くに亡くなりましたが、自分もようやく家庭を持つことができました。姉とは生き別れて二十年以上経ちましたが、あの時生き別れた姉のことが気にかかります。また姉と会いたい」。私が、「お姉さまがお寺に来られることがあれば、ご連絡が取れるのでしょうが......」と話しておりますと、母が一枚の新聞記事を持ってきてくれました。それはお寺の坐禅会が記事になった新聞の切り抜きでした。その記事には、その檀家さんがお母さまとお姉さまと一緒に坐禅をしているモノクロの写真がありました。三十年ほど前に家族一緒に坐禅会に来られていたのです。今は亡きお母さまと生き別れたお姉さまとの写真を見て檀家さんは大変懐かしんでおられました。「差し上げます」と言うと、大事に大事に持って帰られました。私は、いつかお姉さまと再会できますようにと念じながらお見送りいたしました。
目に見えなくても幸せを祈ってくれている人がいます。遠くに住んでいても常に心配してくれている人がいます。今の私のこと、将来の私のことも気にかけてくれる人がいます。 |