袈裟
(出典:『南禅』平成12年7月号)
「一休さん」のとんちのお話しです。
一休さんはある日、たいそうお金持ちの庄屋さんから御屋敷に招かれました。
一休さんは、ご招待を受けたこの金持ちの真意を確かめようと、普段着のまま出かけられました。
すると案の定、お前のような乞食坊主は呼んだ覚えは無いと追い返されてしまいました。
一休さんは思ったとおり、招待されたのは自分自身ではなく、禅師としての肩書きや世間体にあると。
そこで弟子に権威の象徴である「金欄の袈裟」を持たせ、あなたの望むこの「袈裟」にご馳走して下さい、と言わせたお話です。
「袈裟」とは本来、梵語でカシャーヤと言い、捨てられた死体に纏った布やごみの中から拾い集めた布を柿渋色に染め、その布片を縫い合わせたものを言うのです。
貧しい出家者の身を纏うだけの布切れが、中国を経由し我国に伝わり、いつの頃か仏教の「法階」と呼ばれる位階と、仏教の「権威」の象徴として今日に伝わったのです。