随分と遅れてのご報告になり申し訳無いのですが、去る平成28年(2016年)4月16日(土)に、六本木ヒルズ ヒルズカフェにて、記念企画「禅ってなに? スペシャル・リレートーク」が開催されました。
10月29日、30日に控えております鎌倉での遠諱記念大坐禅会に先がけて、「禅っていったい何なのか?どういうもの、どういうことなのか?」を、皆さんと共に考える機会をと設けられたこの企画。
今回は、下記3つのリレートークが開催されました。
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◆第1部 「禅のこころ、茶のこころ」~禅と茶 その本質に迫る~◆
講師:横田南嶺老師(円覚寺派管長)、千宗屋氏(武者小路千家 家元後嗣)
モデレーター:森 昌寛師(松泉寺 副住職)
トークに先立ち、千宗屋氏により、略盆点前にて横田南嶺老師に一服のお茶をさしあげるところから始まりました。
一日のリレートーク全体のはじまりとしても、茶を一服というところから始まるのは清々しいもので、道具組やお菓子のご説明もしていただき、六本木ヒルズ1階のカフェという場所にいながらにして、禅の文化ともいえる茶道の一端を垣間見る事ができました。
その後、千氏による禅と茶の歴史、逸話、そして、侘びや日常の茶とは一体どういったものであるのかなどをお聞かせいただき、また、横田老師からは、お茶というものに対してのお考えをお聞かせいただき、さらにアンチお茶人という立場で、現代のお茶人たちに鋭い指摘をなさいました。
千氏は一つ一つのご質問に、様々な例を挙げられ、真摯にお答えになっておられました。
最後には、お茶でいうところの独服と、坐禅との共通点から、禅と茶というものが不即不離である事を導き出され、締めくくられました。
◆第2部 『「足もとを見よ」の国際性』◆
講師:ブライアン・バークガフニ氏(グラバー園名誉園長、臨済宗入門得度)、
鶴田真由氏(女優) モデレーター:細川晋輔師(龍雲寺住職)
モデレーターの細川晋輔師より、妙心僧堂の修行時代の庭詰めから始まる雲水生活の思い出をブライアン氏と振り返り、鶴田氏に一般目線で質問して頂く流れでの進行となりました。
途中、鶴田氏より、ご自身が体験されたヴィパッサナー瞑想の話から、一炷25分という禅堂での坐禅と、一時間以上瞑想を続けるヴィパッサナー瞑想の違いが挙げられましたが、ブライアン氏によれば、僧堂での25分の区切りというのは、長い歴史をかけて培われた、緻密に計算された時間であるとの見解を述べられました。
季節と一体になった僧堂の生活について、心身のリズムや自然的な生活に造詣の深い鶴田氏が多くの質問を投げかけ、禅僧の生活が現代の人々にこそ求められているのではないか、同じ生活を送るのは無理だとしても、学ぶべきところが多々あるのではないかという話にもなりました。
ブライアン氏は、僧堂を出て長い年月を経た今でも、雲水時代の生活と、気持ちと、何ら変わりはないのだと述べられ、その真摯なお姿に一同感銘を覚えました。
国際的に活躍するお二人の「足もと」は違えど、しっかりと心と身体を結び付けて「今を生きる」姿勢こそ、人生において肝心であるという細川師の結びの言葉でこのトークは終了しました。
◆第3部 「活きた禅あります!」◆
講師:熊野宏昭氏(早稲田大学人間科学学術院教授)、
松山大耕師(退蔵院副住職)、川野泰周師(林香寺住職、精神科医)
モデレーター:永井宗直師(満願寺住職)
臨済禅師・白隠禅師という禅の巨匠がそれぞれ活躍された時代の禅。そして現代、いまここの禅、「活きた禅はどこにあるのか」をテーマに新進気鋭の3者が対談致しました。
現在、アメリカを中心に日本でも流行っているマインドフルネスは、自分の身体や気持ちの状態に気づく力を育む「こころのエクササイズ」とされ、すでにその効果について、多くの実証的研究報告があり、ストレス対処法の1つとして医療・教育・ビジネスの現場で実践されています。
熊野教授は治療にそれを取り入れられていますが、その手法の根底に禅の伝統があるというお話をされました。
松山師は禅僧として世界を視野に活動、世界をよりよくしようと禅を世界に発信、活動する中でどのように禅が個々人の役に立てるのか常に模索されています。また現役精神科医師でもある川野師は薬に頼らない精神的療法が禅にはある……と、臨床に携っておられ、今後の活躍が期待されます。
このトークにおいては、、一環して禅の今後の可能性についてが語られました。
「禅はどこにでも転がっている」とは、禅文化研究所前所長・西村惠信先生の言ですが、まさにそれを感じられるような多岐に亘るリレートークとなりました。
参加者の皆さんそれぞれに気づきがおありになったのではないでしょうか。
さて、次回は実践。10月29日、30日に鎌倉で開催される【大坐禅会】に是非お運びください。
詳細はまたこちらでお伝えする予定です。
どうぞよろしくお願い申し上げます。