行事活動報告

鎌倉大坐禅会 運営委員よりご報告

 「鎌倉は曇り空」 -鎌倉大坐禅会・大法要・提唱 報告-

建長寺派満願寺住職 永井宗直

  いよいよ大遠諱事業も締めくくりをむかえ、鎌倉の地で大坐禅会が10月29日・30日、二日間にわたり建長寺・円覚寺を会場に盛大に行なわれた。一般在家居士・大姉、両山延べ1000名の参加者を迎えることとなった。

29日、大坐禅会を盛り上げるべく、関東各地より大方、尊宿、龍象衆が雲の如く参集、大法要が執り行なわれた。

法要前、円覚寺派管長青松軒横田南嶺老師により臨済録の提唱が行なわれた。現在最も注目される老師の獅子吼に一同聞き入った。

提唱後、建長寺派管長栢樹庵吉田正道老師を大導師に大法要が厳修。歴史に残る二大祖師を讃えての大法要、建長寺法堂は清らかな香で包まれた。

午後、いよいよ一般居士大姉を迎えての大坐禅会。皆々緊張の赴きで法堂にて提唱を拝聴。はじめに埼玉県新座市平林僧堂師家江楓室松竹寛山老師より臨済録を提唱。「何事も禅定を練れ、坐禅とは臍下丹田に気力をもたせ、坐禅とは土台を築くことである」と、力説された。

翌30日、午前10時、建長僧堂師家柏林室酒井泰玄老師より白隠禅師坐禅和讃が提唱される。老師の人柄溢れる穏やかな口調で真摯に語られた。「仏は慈悲して慈悲を知らず」。心に残る一句であった。

続いて午後2時、静岡県三島市龍澤僧堂師家松華室後藤栄山老師より、臨済録提唱がなされた。「臨済録を拝読するということは、臨済禅師に相見することである。臨済録を開いたとたん電光石火、喝!この大声が聴こえてくるぞ」。この名調子。これぞ提唱かと、心が震えた。

このように各山老大師の熱のこもった提唱を拝聴し、参加者ならびに尊宿方にとっても貴重な経験となったであろう。

いま禅はマインドフルネスストレス低減法、その瞑想方法が禅を源流とするもので、医学的見地で紹介され、世界的に高く評価されていることは周知であろう。そんな少なくとも禅に関心をよせる人々は確実に増え、禅はいままさに追い風状態にあるといっても過言ではないだろう。

遠諱委員として準備から約4年間、大坐禅会に思いをよせ、当初1万人の大坐禅会(通称、メガ接心)を企画、夢見ていた自身であるが、結果、当初予想とは下回る参加者数であったようだが、参加者の心に残るよい禅会であった。

円覚管長猊下からも「老舗料亭の味、本当の味を若者に一口でも口にしていただきたい」。そんな願いが込められての大坐禅会であったが、ターゲットとしていた若者の参加者は少なかったように見受けた。折しも天は曇り空、自分の期待とは裏腹、寒さを少し感じた結果であった(あくまで個人的な感想)。

しかしながら、この大坐禅会に到るまでの間、東京で繰り広げられた挑戦的な企画の数々は実に有意義なものであったと思っている。また派を超え多くの友が出来、力を合わせる青年僧達の活力は眼を見張るものがあった。

「鎌倉は曇り空」だったかもしれない。けれど龍は雲を呼んだ。次はきっと法の雨を降らしてくださることであろう。


 鎌倉大坐禅会後記-建長寺

妙心寺派松泉寺副住職 森昌寛

 建長寺では、龍王殿、得月楼、應真閣の3ヶ所を会場に両日で延べ400人を超える方々が大坐禅会に参加していただきました。ひとえに建長寺内局様方はじめ建長寺派よりご荷担頂いた諸大徳、関係各位のご尽力の賜であることは言うまでもありませんが、実行委員の末席を汚す者としても感慨ひとしおであります。

建長寺での大坐禅会で特筆すべきは二日目午前の1グループ80人の方のみとなりましたが、建長寺発祥といわれる”けんちん汁”の昼食を臨済宗の食作法に則って召し上がっていただく機会も設けさせていただいたことです。坐禅を終えられた方々は会場を應供堂に移し、説明を受けながら無言のうちに昼食を召し上がっていただきました。箸の上げ下ろしから洗鉢まで、普段は気にも留めない細かな仕草にも気を配っての食事は恐らく食べた心地はしなかったと思います。しかし、”けんちん汁”の由来にも通じる無駄にしないこと、そして禅は単に坐る事ではなく、坐禅を通して客観的に自己を見つめ直し、そこから行住坐臥、一挙手一投足、日常底も含め日々の生活の中に生かしてこその禅であることを感じてもらえる格別の機会であった事と思っております。

坐禅会のみで参加された方々も受付時には緊張もあったのでしょう、少々強張った面持ちの方々を多く見受けました。ですが、下山される時の表情は皆様落ち着いた満足げな表情をされていた事が大変印象深く、僅かな時間しか体験していただけなかった坐禅会ではありますが、それぞれ応分に坐禅を通して何か感じていただけたと思う次第です。また、希望者にはお帰りになる前に非公開の坐禅堂を含めた境内をご案内いたしました。750年余、脈々と受け継がれてきた禅道場を間近に拝観して、内と外から禅を感じ取っていただけたと思います。

昨今の禅ブームもあり坐禅を体験できる寺院、施設は増加していますが単に坐る事にのみ傾注している場合が多いような気がいたします。坐禅なくして禅とは言えませんが、坐る事によって見えるもの、感じるものを日々活かすべく我々も精進しなくてはならないと思いを新たにした次第です。

改めて関係各位に深甚なる謝意を申し上げ結びといたします。


鎌倉大坐禅会レポート

妙心寺派龍雲寺住職 細川晋輔

 3年前より委員会を重ねて、読売ホールの講演会、六本木ヒルズでの坐禅会やトークリレーを開催してまいりましたが、すべてはこの日本臨済禅の源流と呼べる鎌倉においての大坐禅会のためでした。

不立文字といわれる禅は、言葉をどれほど尽くしても、体験していただくことには遠く及ばないものです。ですから、2日間にわたって多くの方々に老大師方の提唱と坐禅とに、ご参加頂けたことは大変意義のあることでした。

円覚寺での坐禅会の直日は、甲府・恵林寺の古川周賢老大師と湯島・麟祥院の矢野宗欽老大師。ご提唱下さった円覚寺・横田南嶺老大師、平林寺・松竹寛山老大師のお話を受けて、わかりやすく坐禅の仕方をご指導下さいました。それぞれの参加者は、今まで親しんだ坐禅の仕方に囚われること無く、直日和尚の指導に耳を傾けて下さりました。そして、短い時間ではありましたが、それぞれ座布団の上でご自身と向き合われておられました。あえて警策をまわさない静寂の中で、横田管長猊下をはじめ荷担の和尚方も参加者と共に坐って、同じ一炷をきざみました。

坐禅の時間が終われば、円覚寺舎利殿を特別に拝観させて頂きました。あらかじめ申し込まれた方は、円覚寺名物の浄智寺様お手製の精進カレーを美味しく頂く方もいらっしゃいました。まさに、遠諱法要で横田管長猊下がご提唱くださった「臨済四料揀」を、体現したかのような素晴らしい大坐禅会でした。また、参加者の多くは、ご荷担くださった円覚寺僧堂の雲水さんたちの毅然とした立ち居振る舞いに、大変感動されていました。私自身、臨済宗の将来に希望を持つとともに、僧堂時代を忘れてはならないということも教えて頂きました。

最後になりますが、円覚寺の管長猊下をはじめ、内局各位、職員の方々にいたるまで、多大なご尽力を賜りました。また、大変お世話になりました実行委員会各位、特に外部の目から色々とご助言頂きました広瀬様に、心より感謝申し上げます。