臨済禅師・白隠禅師遠諱事業の特別展「禅-心をかたちに-」が東京国立博物館で開催されました。
これは、教外別伝、不立文字を標榜する禅宗が伝承してきた法の趣を、「かたち」として遺された名宝を通してより多くの方々に知っていただくもので、京都会場に引き続き、臨済宗黄檗宗十五派の全面協力のもと、国宝22件、重要文化財102件を含む、239件の名品を選りすぐり、東京国立博物館・平成館において10月18日から11月27日までを会期として開催されました。
展示ストーリー(章立て)については、基本的に京都会場と同じでしたが、展示内容については、東京会場のみの作品もあり、若干異なっておりました。特記事項としては、後期展示のスタートとともに、アメリカのエツコ&ジョー・プライス夫妻のご厚意によって、伊藤若冲の作品が特別出品として2件追加されたことが挙げられます。また、展示方法としては、京都会場よりも解説パネルなどの数が多く、来場者の関心を集めていました。
関連イベントとしては、円覚寺・横田管長による講演会「白隠禅師に学ぶ」、救仁郷秀明氏(東京国立博物館)による記念講演会「禅の美術」、山下裕二氏(明治学院大学教授)と山口晃氏(画家)によるトークイベント「雪舟 vs 白隠 達磨図に迫る」、筑前博多・一朝軒による尺八コンサート「吹禅(すいぜん)のひびき」、臨済宗大本山建長寺 禅文化委員会と三笠景子氏(東京国立博物館)による「禅寺の四ツ頭茶礼」などが催され、いずれも好評を博しました。
また、会期中、建長寺派・円覚寺派布教師と臨済会による「禅トーク」や「写禅語」等、禅を体感できるワークショップも行われ、多くの参加者を得ましたが、その中でも、「写禅語」は好評で、継続して行える場所や教材を望まれる声が多数寄せられていました。
この東京会場では、13万3千人の方々にご来館いただき、これで、京都と東京の2会場で開催された、72日間の会期中の入場者数は22万2千人となりました。また、京都会場同様、東京会場においても、外国人の観覧が目立ちました。ここから、諸外国の人々の禅への興味というものが、より一般的になって来ていることがうかがえ、禅への理解のすそ野が、確実に広がりつつあることを実感しました。
この展覧会は、臨済・黄檗両宗十五派の全面協力のもとに実現した、禅宗美術に関する過去最大規模の展覧会、まさに「禅宗美術展の決定版」として、以前、円覚寺派管長猊下がおっしゃった、「縁のある人には更なる縁を、まだ縁のない人には一人でも多く仏縁を結んでいただくことに遠諱の大きな意義がある」とのお言葉のように、禅の専門家から、これまで禅の教えに触れる機会のなかった人まで、幅広く仏縁を結んでいただき、一定の成果が得られた、と考えております。