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無常のなかで「おかげさま」に生きる

(出典:書き下ろし)

myo_2010b_link.jpg 約1年前の10月末、朝のニュースを何気なく観ていたら、沖縄の首里城火災の速報が入りました。その半年前には、同じく世界遺産であるパリのノートルダム大聖堂が全焼し、火の怖さを感じた矢先の衝撃的な出来事でした。多くの人々の想いが詰まった歴史と伝統ある建造物が一瞬で焼失する姿に、無常の現実を目の当たりにしました。
 お釈迦さまは、常なるものは無く、この世は全て移り変わる「諸行無常」を説き、それを受け入れることが、苦しみから解放される第一歩であると説きました。無常というと、桜の散る姿や鐘の音など、その儚さにどことなく美しさを感じていた私でしたが、いざその厳しさを突きつけられると、自分の無常観は机上の空論に感じました。

 観光でも訪れた首里城でしたが、何より心に残るのは『ぶっちゃけ寺』というテレビ番組のロケでお世話になったことです。5年前の同時期に、番組でお城特集が組まれた際、首里城の紹介を担当したのが私でした。沖縄に行ける喜びも重なり、芸人のハイヒールリンゴさんと共に行なわれたロケは、大変楽しく貴重な思い出となりました。城内には寺院建築の特徴も多々あり、学芸員さんが共通点を沖縄らしい表現で懇切丁寧に教えてくれた優しさも忘れられません。
 城郭の側には、琉球王国代々の菩提寺で当時は沖縄で最大のお寺であった「円覚寺」跡があり、大戦の焼失を免れた総門を巡りました。首里城内には「万国津梁の鐘」と呼ばれる大鐘もあり、まさにお寺の鐘が鳴るが如く、城内に鳴り響く鐘の音も味わえました。さらに正殿内部では、お寺の須弥壇の如く設計された玉座があり、周りには仏教を守護する瑞獣とされる龍も数多く彫られていました。その龍の爪の数が(諸説ありますが)中国は5本、日本は3本ですが、沖縄ではその間の4本となっており、どちらの国にも歩み寄る琉球独特の文化に触れることもできました。

 そんな思い出深い場所が、一夜にして無くなってしまう。無常は突然訪れ、避けることもできませんが、それを目の当たりにすることで、首里城での経験やその人達のおかげさまによって今の自分があることに、改めて気づきました。
 新型コロナウイルスとの共存生活でも、当たり前にできていたことが制限されるなかで、その当たり前の有難さに気づいた方も多いはずです。無常の世界で生きねばならない私たちですが、それに抗うのではなく、そのなかで「おかげさま」を感じて生きることで、日々の何気ない幸せに気づくことができます。首里城の火災から1年を迎えるにあたり、改めて私自身もその心を祈り、常日頃から感謝合掌の気持ちを心がけていきたいと思います。

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