おもてなし!
(出典:書き下ろし)
ほおずきの 色づくころや 盆ちかし
自然の営みが、お盆の近いことを教えてくれます。お盆の準備がはじまります。
盆ちかし 一人ひとりの 位牌ふく
一柱一柱のお位牌を拭き清めていると、亡きお方のお一人お一人の心が伝わってくるようで心が温まります。ご先祖さまをお招きするお盆。
迎え火は おいでませとの おもてなし
お墓参りをして、ご先祖さまをお迎えします。地域によっては、山や川より里に通じる道の草刈りをする所もあるとか。
これは故人が、山や川にいるということで、お帰りになるご先祖さまが、通りやすいようにとの”おもてなし”ではないでしょうか。
何年か前のお盆のこと、車で走っていますとラジオからこんな話が流れてきました。
小学校三年生の男子生徒、この子は恐ろしい程の悪ガキいたずら坊主でした。一年生の頃から、女の子の髪をハサミでバサッと摘み切ったり、スカートをスパッと切ったり、お腹を蹴られた男の子は長らく入院し、授業中に歩き回って友達の頭を叩いて回る。先生に「掃除しなさい」と言われても全然しない。
「君は掃除しなくていいから、じゃまにならんようにしておれ」と言われると、意地になってする。その度ごとに先生に叱られる。草が伸びると草と草を結んで輪差を作り、大人たちがその輪差にひっかかって転ぶのを見て手を叩いて喜ぶ。大人たちに怒鳴られ怒られる。こういう調子で学校はおろか、村中で評判のやんちゃ者でした。
その年のお盆も近づいた頃、この少年は何を思ったのか自分の家からお墓まで、草を引き、窪みには土を入れ、大きな石やゴミをどけ、誰もが安心して通れる道に何日も何日もかけて直したというのです。
これが評判に評判を呼び、学校の知るところとなりました。担任の先生が、問い質(ただ)すのですが、彼は黙って下を向いたきりです。一向に埒(らち)が明かない。それならばということで、校長先生が話をしてみると、彼は小声でボソッと
「父ちゃんが……」
「父ちゃんが……どうした?」
「うん、校長先生、ぼく、おじさん、おばさんが話しているのを聞いた」
「何て言うとった?」
「うん、お盆になったら、お盆になったら死んだ人が、帰ってくるって」
実はこの少年、幼稚園の時、お父さんを亡くしていたのです。
「そうか、それでお父さんが帰ってこられる時、気持ち良く帰ってこられるように、
キレイにしとったんか」
校長先生はさっそく全校集会を開いてみんなの前でこの話をされ、最後に「この学校で、この村で彼は一番、優しい親思いの生徒です」と褒められました。それからの少年の態度が一変したのは言うまでもありません。
父親に「叱られたい」、「怒鳴られたい」、「怒られたい」幼心が彼に悪さをさせていたのでしょう。ところがお父さんに会いたい一心でしたことが、彼の心を一変させました。 つまり亡き人は、生きている者の心の支えになっているのです。
お盆とはご先祖さまの大きな大きな”いのち”の中に、自分の”いのち”が包まれてあることを知る機会であり、それを実感できたならば、私の申し上げたい”おもてなし”に他なりません。亡き人と共に、より良く生きてゆきますという誓いと祈りをこめて
送り火に たくす思いは また来てね 合掌