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羊と盛り塩

(出典:書き下ろし)

 神道では塩で清める為、祭の前に海や川で禊をして身体を清めます。神前にも盛り塩をして供えています。大相撲は神事なので、土俵に盛り塩して清め、力士は取り組みの前にお互い塩を撒いて清めています。一般に塩は清める為のものだと思われています。
 2015年の今年は乙未(きのとひつじ)年で、古来、羊はめでたい動物と言われています。その由来は次のとおりです。
 4世紀ごろの中国は漢が滅亡して晋の時代。武帝は羊を歩かせ、止まった部屋の側室と一夜を共にする事とした。王様の子供を産めば自身の出世は勿論の事、一族の出世にもなるので、何とか王様に来て頂くため後宮の側室達は心を配った。
 近頃、王様は何時も同じ部屋に泊まっているが何故か……、注意していると夕方部屋の軒に笹をぶら下げているのである。羊はその笹を食べるためにその部屋の前で止まる事がわかったので、各部屋でもそれ以来、みな笹をぶら下げた。
 暫くするとまた、羊は同じ部屋の前で立ち止まるようになった。不思議に思い、みな気を付けて見ているが、とくべつ変わった事はしていない。ただ、夕方部屋の前に水を撒いているだけなので、他の部屋も同じように水を撒いたが、羊は相変わらず同じ部屋の前に止まった。実はただの水ではなく、塩水を撒いていたのだ。

 「羊は祥なり」、羊は福と富を招く。昔は「吉に羊」で吉祥と言ったそうです。塩盛りとは、羊を招く為に塩を用いたという故事から来ているのです。
 年の初め台所の竈に盛り塩したり、水商売のお店の門に盛り塩しているのは、羊が人を乗せて店に来てくれますように、福と富をもたらしますようにという思いからです。
 塩は清めるだけではなかったのです。ちなみに臨済宗の大般若祈祷では、塩盛り、洗米等をお供えします。これも清めとともに、福をもたらす意味をこめての事であろう。

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