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今より若い歳はない

(出典:書き下ろし)

myoshin1312b.jpg 「今より若い歳はない」。ある和尚さんとの会話中、耳にした言葉です。その和尚さんがいうには、檀家のお爺さんの口ぐせだそうです。たしかにどんな人でも今より若い年はないのです。「今をおざなりにして、いつするか」という心意気は常にもちたいものです。
 京都・清水寺の貫主であられた大西良慶師は、109歳という長寿を授かり、また山下頼充さんの五つ子の名づけ親としても知られています。
 師が百歳を迎えられたお祝いの席で、ある外国人からこんな質問をされます。「和尚さん、あなたの百年の人生でいつが一番幸せでしたか」と。
 その時、傍におられた弟子の森清範師(現貫主)は、「師匠はおそらく体力的にも自由がきいた六、七十代の頃でしょう」と答えるに違いないと想像しました。
 しかし師は即座に「今がいいね、今が一番幸せだ」と答えたというのです。
 目もうすくなっている。耳も遠くなっている。食物にもいろんな制限を受けている師匠が「今が一番幸せだ」と即答されて、森師は大変感動したといいます。
 「師匠がいかに真剣に己のいのちと向き合い、どのような姿勢で生きておられるのか、冷や水を浴びる思いをしました」と述べておられます。
 森師は自著の中でこう語ります。

 今という時を生きる。今の時を喜ぶ。こうした中にこそ、私は永遠の生命があるように思います。体は時間が経てば老いていきます。体の自由も若い時に比べればきかなくなりますが、変えることのできない過去にとらわれるのではなく、この「今」という瞬間に全てをかけて生きる姿こそが、何ものにも揺るぐことがない、心の安らぎをもたらすものであると思うのです。

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