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こころに効く般若札

(出典:書き下ろし)

rengo1301b.jpg 新しい年を迎え、多くの菩提寺で大般若会を厳修し、般若札に心を込めます。しかしせっかく心を込めた般若札も、持つ人の信心が薄ければそれはただの紙切れでしかありません。なぜなら般若札とは、この世に効くのではなく、持つ人の心に効くのですから。
 般若札には以字点と呼ばれる阿吽を表わす四つの点が上部に書いてあります。阿と吽はそれぞれ言葉の最初と最後で、転じて言葉で表わせるもの全て、つまりこの世の全てを表わします。そしてこの世には必ず順境と逆境の両方があるのです。逆境のない順境だけの世界を般若札に願っても決して叶う事はありません。
 逆境と言えば東日本大震災を思い浮かべるかも知れませんが、大震災で被災された方々のお宅にだけ般若札が無かった訳ではないのです。また震災を機に、逆境があったからこそ順境の有難さが分かったと洩らす方も大勢いらっしゃいました。逆境があって初めて分かるのです。
 般若札は都合良く逆境を跳ね返してはくれません。それはどんなお札でもお守りでも同じです。人間には魔が差す瞬間があります。魔が差さない人間はおりません。魔が差すから事件が絶えないのです。せめてその魔が差す瞬間だけでも人間は抑えなくてはなりません。その為のお札なのです。逆境がある事は避け様がありません。しかし順境であっても慢心せず、逆境にあっても諦めない。常に自分の心に潜む魔をコントロールする為に般若札は存在するのです。
 結婚指輪も言ってみれば単なる金属です。そこに誓いという心を込めるからこそ美しいだけのただの金属ではなくなります。しかし、はめた人が常にその誓いと向き合わなければただの金属以上の働きはしてくれないのです。
 般若札も同じです。心を込めるからこそ般若札であり、心を込めなければただの紙切れに戻ってしまいます。出かける時に目につく玄関や普段過ごすお茶の間などに飾って、常に御自分の心をしっかり重ねて頂く。そうしなければ般若札は効き目がありません。心に効くのですから。持っているだけで効き目がある訳ではないのです。そして出来れば目線より高い所に飾って下さい。なぜなら人間は下を向きがちなのです。いつも見ていない所に気を向けさせるからこそ意味があります。
 是非、般若札を大切にして頂き、その般若札に皆さんの心を重ねて頂いて、そしてしっかりと皆さんの仏心、「ほとけごころ」を発揮して頂きます様にお願い致します。

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