釈尊成道2600年に思う
(出典:書き下ろし)
お釈迦さまは、人として生まれ(降誕)人として亡くなられ(涅槃)ました。ただ私たちと違っていたのが、”大いなる覚り”を得られたか否かです。
釈迦族の王子として何不自由のない生活であったにもかかわらず、29才の時出家をして6年間の難行苦行をされ、35才でお悟りを開かれ(成道)ました。以来45年間に亘り仏の教え(仏教)を説かれ80才でお亡くなりになられたと伝えられております。
菩提樹下に坐られ、12月8日、明けの明星をご覧になり「奇なる哉、奇なる哉、一切の衆生悉く如来の智慧徳相を具有す」(不思議なことだ、不思議なことだ、自分が6 年かかってようやく悟った仏性を、みんな生まれた時から持っておるんだ。不思議じゃないか。全ての生きとし生けるものが、みんな仏性を持っておるんだ。みんなそのまま仏だ。〈山田無文老師著しんじん文庫「釈尊にかえれ」より抜粋〉)と、重ねて人間の尊厳と自由を宣言されたのが、釈尊の成道だったと思うのです。
平成24年5月、妙心寺で行なわれた講習会に参加する機会を得て、霊雲院住職則竹秀南老師の提唱(法話)を拝聴致しました。そのお話の中で「この提唱後、今からタイのバンコクに行き、国王と王妃が丁度節目の年にあたりそのお祝いと、お釈迦さまが成道されて2600年のウエサカ祭に参列して来るのだ」とおっしゃいました。
今年はタイの皇族が節目の年にあたるのと、お釈迦さまが悟りを開かれて2600年とは、うまく都合を合わせたのではないか……という思いを抱きながら半月間の講習会を終えたのでした。
そこで改めて調べてみたところ、平成24年(2012年)は、全日本仏教会が採用している仏暦では、2555年になります。お釈迦さまは亡くなられる45年前にお悟りを開かれたわけですから、仏滅紀元元年としている仏暦に45年を加えると、計算するまでもなく2600年! 成道の年こそが仏教元年ともいえるのではないかと思うのですが、何ということか、この節目の年であることを知らずにいた自身の不明を恥じると共に、成道の地ブダガヤ行きを思い立ち、苦行の地である前正覚山の洞窟へも登らせて頂き、その地に祀られている釈迦苦行像にも参拝することが叶いました。
平成25年1月19日は、旧暦12月8日にあたります。私たちには、生まれながらに仏の命と智慧が具わっているということを気づかせて下さったお釈迦さまに感謝しつつ、この尊い命の力を善い方向へと活かせるよう新たな年を過ごしてゆきたいものです。