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11月の絆

(出典:書き下ろし)

myoshin1211a.jpg  11月ともなりますと、霜月ともいいますように朝夕が冷え冷えとしてきます。昼夜の寒暖の温度差が進むに連れて、山々の木々の葉も色付いて黄葉、紅葉の錦模様となり、そして落葉の時節を迎えます。
 そんな季節の移り変わる中、ある人権の研修会がありました。講師の方がワークショップの一環として「バースデイチェーン」というコミュニケーションの取り方を示しました。「声を出さず話さずに誕生月の早い順に並んで下さい」ということで、会場はお互い身振り手振りで右往左往しながら、一月生まれから十二月生まれの順番に並びました。順番に誕生月日を言いますと、会話なしでも生まれ月の早い順に並ぶことができました。この一連のコミュニケーションは、自分と同じ誕生日の人や隣り合わせに並んだ人に親近感を覚え、会場内の雰囲気も和やかになりました。
 「袖振り合うも多生の縁」ともいいますが、とかく私たちは身近なことで共通点があると何かしら意識し、親しく共感を覚えることが多いのではないでしょうか。
 ところで11月11日は、妙心寺の開基さまである第95代天皇、花園法皇さまのご命日、”法皇忌”であります。”往年の御宸翰”といわれる法皇様のご遺言状の中で「報恩謝徳と仏法の興隆」を願われたご意志を学び感謝する日であります。妙心寺の歴史は花園法皇さま、お一人のご発願から始まります。弱冠12歳で皇位につかれ病弱なお身体でもあり、世の中の人心の乱れに悩まれて仏道に入られ、特に禅の教えを学ばれて安心を得た。この安らかな心を人々に伝えてもらいたいとの思いで妙心寺を創建されました。その末寺の住職として私はご縁を戴き、今自分の使命を確認しているところですが、この日は私の師父の誕生日でもあります。そして11月は祖父の祥月忌でもあり、私自身も11月が誕生月であります。秋深まるこの11月は特にご縁の重なった月でもあり、花園法皇さま、祖父、父と身近な人がなお一層に親しく思われ絆の深さを感じます。
 また余談ながら私の曽祖父、祖母の命日が11月であります。一人娘としてお寺に生を受けた祖母は35歳を一期として曽祖父と同じ月日になくなりました。父が10歳の時でした。曽祖父、祖母の命日の日が父の誕生日と同じ日という不思議な巡り合わせに驚くばかりです。
 「人身受け難し今すでに受く」。先祖から受け継いだ命を頂いて私たちは生きております。この生かされた命をまずは身近な人と育み明るく喜びのある日暮らしを送りたいものです。

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