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夏風邪と縁起

(出典:書き下ろし)

myoshin1207b.jpg 皆さま、暑い日々が続いていますが、体調を崩しておられないでしょうか。恥ずかしながら私は、先日突然高熱が出て、十日間程熱が下がらないということがありました。色々な病院で診て戴いたのですが、お医者様は、「うーん夏風邪かな。まあ、大丈夫でしょう」と、仰るばかりで、はっきりした原因は不明でした。原因が分からないと、より不安になります。「原因はなんだろう。なにが悪かったのだろう」と、その時は色々と思い悩みました。
 「原因があるから結果がある」。この考えを、私たちは日常で当たり前の事として受け入れています。これは、仏教の「縁起(因縁生起(しょうき))」という教えに通じます。「縁起」というと、私達は普段、「縁起が良い」というように使いますが、元々の意味は違います。仏教の「縁起」とは、「物事には必ず原因(因)があり、色々な要因(縁)が組み合わさり、結果(果)が、生まれる」というものです。しかし、この「縁起」で重要なことは、「結果には、必ず原因がある。しかし、何が原因なのか、どのような要因が組み合わさっているのか、私達には複雑過ぎて完全には分からない」と、いうことです。一言で言えば、「原因はあるが、私達にはそれが分からないことがある」ということです。
 原因を追求することはとても大切なことであり、なんとしても究明しようと努力せねばならない時もあります。しかし、原因よりも目の前の結果をしっかりと見つめて対処するべき時もあります。そんな時は、「まず、原因を考えるよりも、今、ここで、自分が、何をすべきか」と、気持ちを切り替えることが大切です。
 私も、「高熱の原因は何だろう」と、思いを巡らし、不安を募らせていましたが、「あれこれ考えても分からない。まず、今はゆっくり休もう」と、思い直すと、少し心が楽になりました。
 原因は何だろうと思い悩んだ時、呼吸を整えて静かな時間を過ごし、「分からない事もあるんだ」と、気持ちを切り替え、「今すべきこと」を見つめることは、解決への道の一つではないでしょうか。

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