今、ここ、この私
(出典:書き下ろし)
死刑囚は、刑執行の当日朝7時にその事実を告げられるそうです。終身刑の受刑者は文字通り“終身”、残りの人生を所謂“塀の中”で過ごすのですが、所内での規則正しく忙しい毎日の生活の時間の流れは比較的ゆっくりと感じるそうです。
しかし死刑囚はと申しますと、言ってみれば“明日”がないのです。“明日がある”と誰もが思っている、その“明日”がある日突然なくなるのです。
ですから、「今日やり残した事はなかったか、今日を精一杯生き抜いたか」と常に自問自答し、誰に教わる訳でもなく“今、ここ、この私”に真剣に向かい合うようになれるそうです。
人間はいつか死にます。絶対にいつか必ずこの世を去ります。ですが我々は、「自分はまだ死なないよ。後30年くらいは生きて……」と、自分に降り掛かる都合の悪いことは先延ばし……。
昨年の3月11日午後2時46分17秒までは……。
我々は一秒先の“生”に対してさえ、何の確約もないまま日々生活をしているにもかかわらず、“なるべく考えたくない”と多くの方々が思っているのもまた事実です。
“先”のことを計画するのは大切なことです。
“過去”のことを反省することも大切なことです。
“今”にきちんと向き合うことも我々には必要だと思います。
しかし、毎日毎日朝から晩まで”一秒先”のことを気にしていたら気が滅入ってしまいます。
時々深呼吸して、ちょっとリフレッシュする時間が持てればいいですね。