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御天道様が見てござる

(出典:書き下ろし)

myoshin1206c.jpg 先月の21日、多くの人の心を躍らせたのは金環日食です。今回のように日本列島の広範囲で見られたのは、なんと932年ぶりのことだそうです。
 新聞やテレビで、日食を見る時には目を傷めるので必ず専用のグラスで見るように……と注意を促していました。あわてて専用グラスを買いに行きましたが、どこのお店も売り切れで残念ながら手に入れることはできませんでした。当日、日食の時間になって外に出てみると、太陽が照り、絶好の観測日和です。一瞬太陽を見てみますが、まぶしいだけで何も見えません。あきらめて部屋に戻りテレビをつけると、美しい金環日食が映し出されていました。映像とはいえ、とても感動しました。
 今から三十年ほど前、夏目雅子さんが三蔵法師に扮した『西遊記』という番組が放映されておりました。その中のシーンで日食の日に三蔵法師が妖怪に捕らわれ、火あぶりにされる寸前に呪文を唱えると、太陽が欠け始め、段々と暗くなっていくシーンがありました。あわてた妖怪たちが太陽を返してくれと頼むと、三蔵法師がまた呪文を唱えて太陽を元に戻し、無事に助かったという場面を覚えています。不思議な妖術を使うといわれる妖怪にとっても、太陽は操ることのできない偉大な物のようです。
 太陽のことを別の呼び方で、御天道様(おてんとうさま)と呼びます。頭に御をつけ下には様をつけて、敬い親しんでよぶ呼び方です。子供のころ祖母から、「誰も見てないから悪いことをしても分からないと思っていても、お天道様が見てござるよ」とよく言われました。お天道様は私たちのことをすべてお見通しということでしょう。子供心に、何か神秘的で、そんなこと嘘だろうと思う反面、大変恐ろしい言葉でした。
 私たちの心にも太陽のような、大きくて、暖かくて、明るく光るものが入っているように思います。その太陽のような心を大いに出して生活をすれば、満足感のある一生が送れることは間違いありません。
 しかし、皆既日食の時のように何かに隠されて見えなかったり、金環日食のように周りだけが姿を現わしたり、部分日食のように一部分だけが見えたりと様々な日があります。
 また、日食のように他のものに隠されて見えなくなるだけではなく、自分のエゴに隠されて光を放てない時も多くあるように思います。そんな時はどこにいても「御天道様がみてござる」と戒めることも、満足感のある良き一生を送る近道ではないでしょうか。
 半信半疑な思いですが、本当にお天道様は何もかもお見通しかもしれませんよ!

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