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インド仏跡巡礼

(出典:書き下ろし)

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念願の天竺参りの機を得たる
僧我は仏のみ弟子なりけり
経をよみ礼拝の後座
禅組む今朝の幸せ釈迦成道の地で

 お釈迦さまの後を慕って巡拝の旅をする機会に恵まれた時のこと。「現代禅」の牽引役者松原哲明師の呼びかけで集まった面々を見ると、三十代から四十代がほとんど。ついて行けるかどうか、かなりの不安を抱きながらも、八大聖地で経を読んで坐禅をするという目的の巡礼の旅は滅多にないので、仲間に入れていただくことにした。勿論、最も気をつかったのは体調の保持。(1)睡眠を十分に。(2)腹六分。(3)アルコールをセーブする。この三つを守ったおかげで、私が意外に元気だと多くの人が言ってくれた。
 今からおよそ2500年前、お釈迦さまがされた説法を、お経という形式で読んでいるのだという時間が改めて湧いてきて、目頭が熱くなるのを禁じ得なかった。たまたま韓国の観光客に出会った。彼等は、塔に向かって礼拝していた。額が地面につくまで丁寧に。これを見ながら「六方礼経(ろっぽうらいぎょう)」という短いお経を思い出した。その内容は次の通りである。」

 ある早朝、お釈迦さまが托鉢にでると、ある家で一人の若者が顔を洗っているのが目に入った。その若者は顔を洗った後、東の方を向いて拝み、南の方を向いて拝む。次に西を向いて拝み北を向いて拝む。更に上を向いて拝み下を向いて拝んだ。お釈迦さまは側に近づいて若者に尋ねた。
「お前は毎朝そうして拝むのか」。
「はい、毎朝こうして拝みます」。
「東は誰を拝むのだ」。
「わかりません」。
「南は誰を、西北上下、どなたを拝むのだ」。
「わかりません。親から聞いた通りにしています」。
「そうか、それは残念。意味を知らないではつまらない。私がその意味を教えてあげよう。東を向いて拝む時は、自分を生んで育ててくれた両親のご恩を思って『ありがとうございます』と拝みなさい。西を向いて拝む時は、妻(夫)や子の恩を思って『ありがとう』と感謝するがよい。南を向いて拝む時は、学校の先生や習い事の先生など、教えてくれたすべての先生に感謝しなさい。北を向いて拝む時は、幼い頃からの友達や、職場や近所の友達のご恩を思って感謝しなさい。上を向いて拝む時は、神・仏の正しい道や倫理・道徳の正しい方向を教えてくれた人達に感謝しなさい。下を向いて拝む時は、目立たないけれど汗水たらして働いている人に『ご苦労様です』と感謝しなさい」。

 これが「六法礼経」のあらすじである。
 インドの仏跡で坐禅しながら、お釈迦様の教えは徹底した人間尊重の教えだと改めて感じた。

釈尊の 初天法輪の丘に立ち 見上ぐるストーパ 輝きて見ゆ

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