人生に花を咲かせる方法
(出典:書き下ろし)
桜の木を割って見ても、そこに桜の花はありません。花が咲く根拠は何か、なぜピンクの花びらなのか、その科学的な説明はお釈迦さまでも難しいでしょう。しかしこの和歌からは、「すべてには原因があって結果がある」という、お釈迦さまの教えを学ぶことができます。
現在見聞きするすべての現象は、そのようになる原因があったのです。桜の花を咲かせるのは、春がもたらす気温の上昇です。人生に花を咲かせるのは、人間性、社会性の向上になりましょう。良い種まき(原因)をすれば、良い実(結果)が得られます。
小説家の吉川英治氏は、「我以外みな我が師なり」と言われ、常に正しい自分のあり方を学ぶ姿勢を持たれました。どうすれば自分もみんなも幸せに暮らせるのか、一人ひとりが正しい方向性(原因)を追求したいものです。
東日本大震災では、言葉に表現できないほど甚大な被害を受けてしまいました。二度とこのような悲劇が起きないよう、対策を講じなければなりません。今なおつらい思いをしておられる方々のために、私たちがどのような行動を取ったら良いのか、これも一人ひとりが考えて一歩前へ進む行動が必要です。
私は以前、ご本山と岐阜の教区で3つの役職を受けていたため、毎日のように午前零時まで仕事をしていました。今から思えば、そんな生活を半年程過ごした頃、ウツ病になっていたと思います。自分ではそれほど負担に感じていませんでしたが、あたかも低温火傷のように脳が傷付いてしまったのです。何となく気分がすぐれないまま過ごし、やがて死を恐れなくなっていました。多くの人々が自死されてしまう現状を、少し垣間見たように思います。
やはり無理をしてはいけませんね。無理とは「ことわりがない」と書きます。正しい方向性から、はずれて行動していることを示唆しています。無理をしなければならない立場の方もあるでしょうが、「無理をしている」という自覚があれば、桜の木を割らなくても、その中に桜花を観ることができるでしょう。
過ごしやすい季節となり、お花見に出かけられる方もあると思います。気分の高揚は大変結構ですが、お酒の飲み過ぎは禁物です。車の方はスピードの出し過ぎなど無理のないよう、大切な生命を守っていただきたいものです。お花見に出かけられない方も、身体と呼吸を調えて良い結果が続くよう、人生の花が咲き続くよう、自身の内側を覗いていただければ有り難く存じます。