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「二人三脚」こころひとつに

(出典:書き下ろし)

myoshin1110b.jpg 10月5日は禅の初祖の達磨大師の命日です。達磨大師の教えの中に「三種安楽の法門」があります。その三つとは、「徐緩」・(じょかん)「唯浄」・(ゆいじょう)「唯善」・(ゆいぜん)です。簡単に説明しますと、「徐緩」は、ゆっくり落ち着いて、あわてるなということ、「唯浄」は清浄心を自分の心とせよということ、「唯善」は、腹を立てるなということです。この三つを心がけることで、安楽、しあわせに近づけるという教えです。
 次のようなお話がありますので紹介します。

 昔ある国の王さまが、立派な住まいを建て、東西の白壁に国内でも有名な画家に壁画を描くように命じました。A画伯は、東側の壁にわき目もふらず描き始めました。B画伯は、絵具も持たず、絵筆も持たず、白布で西壁をただ黙々と磨き続けました。 王さまの決めた期日になり、王さまは期待に胸をふくらませ、まず東の壁の前に立ちました。A画伯が精魂込めた力作に膝を叩いて大満足で、A画伯をたたえました。次に西の壁に向かいました。A画伯に勝るとも劣らないといわれるB画伯です。必ず秀作を描いたのであろうと期待していましたが、王さまの期待に背いて、もとのままの白壁でした。王さまは怒りが先立ちB画伯の怠慢を責めました。B画伯は静かに頭を下げ、「王さまなにとぞここまでお越し下さい」と東西の両壁の間にある地点へ導きました。王さまがその地点に立ってBが指さす西壁を眺めます。なんと、丹念に磨き上げた壁面は、鏡とはまた違うつややかさで、東壁のA画伯の作品を深々と映して、えも言われぬ味わいが感じられるではありませんか。王さまは思わずうなって「よくぞ描いた、よくぞ磨いた」とたたえました。
(出典不明 松原泰道師新聞寄稿文より引用)

 
 この二人の画伯のように、描き磨いてお互いを生かし合う、二人三脚のように心ひとつに、あせらず、清らかな心で、決して争わなかった結果、素晴らしい壁画になったのでしょう。
 しあわせとは、自分だけのものではなく、他をしあわせにするところに意味があります。他がしあわせになるように、自分の生活を正しくするところ、その方法のひとつが、「三種安楽の法門」の教えです。
 秋の夜長、考えてみてはいかがでしょうか。

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