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共に生きる日本 -相利共生-

(出典:書き下ろし)

rengo1105b.jpg 人間というのは元来弱い者であると、いつも私は考えています。それは、人は一人では決して生きられないからに他なりません。だから、自分の好む、好まざるに限らず、こうして社会を形成して、お互いに支え合いながら生きています。
 2011年3月11日は、忘れられない日となりました。地震と、それに伴った大津波が東北から関東を直撃、中でも岩手県、宮城県海岸部は壊滅的被害に襲われ、福島県は、原子力発電所の事故という天災プラス人災のダブルパンチで、今なお見えない恐怖と戦っている最中です。
 震災の体験といえば、私自身サンフランシスコ在住の時に、ヘイワードからサンフランシスコへ向かってベイブリッジを走行中、大きな橋が、まるで縄が揺れるように、大きく上下左右にゆれたのを覚えております。しかも、翌日の新聞で、少し前に走っていたオークランドのフリーウェイが倒壊したのを知って、心底、恐怖を感じて震えが止まりませんでした。
この度の震災一週間後より、秋田経由で陸前高田の避難所に物資を送り、次いで宅急便が復活以降は宮城方面に直接物資を送っております。これは我々仏教の世界でいう布施という行為にあたります。
 大きな災害が起こるたびに思う事。その災害の規模が大きくなればなる程、人間とは、なんと強いものなんだろうと、驚嘆させられます。
 最初に私は、人間とはかくも弱いものなのかといいました。しかし、その弱い人間が一旦大きな災害に遭って団結すると、その力はかくも強い団結力で、共に生きるということを実践してくれるのです。
 東日本大震災では、死者行方不明者が2万5千人以上となっています。沿岸の町は津波で壊滅し、家も、仕事もなく、明日の希望さえ見出せません。そんな人達が、瓦礫の中から、自分はふるさとを決して棄てない、我々は復興の狼煙を上げるのだと頑張っている姿には、感動すら覚えます。そしてそれを後押しするのが、日本のみならず、世界中の人々から届く支援なのです。
 人間は一人では何も出来ない弱い存在かもしれませんが、世界中の人々が、被災した人達と共にあるということ、この思いによって、被災した人達も故郷復興を目指す強い気持ちを起こし、共に生きて行くというのが「相利共生」なのです。皆で手を把って、共に生きていこうではありませんか。

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