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高血圧症

(出典:書き下ろし)

myoshin1103b.jpg 昨年夏の暑いある日のことです。朝から頭がフラフラしますので、家で血圧を測ってみると下が115、上は175もあって驚きました。病院嫌いの私もさすがに心配になり、すぐに病院へ行き診察を受けました。診察の後で先生から「あなたは高血圧症です。今日から血圧を下げる薬を服んで下さい」と言われました。
 先生に「いつまで飲めばいいのですか」と尋ねると、「一生飲み続けて下さい」とのこと。私は現在50歳ですから、平均寿命から考えると向こう30年は飲み続けねばならない計算になります。これは面倒なことになったものだと思っていると、先生がついでだからこの際、他の検査も受けて行きなさいと言うので、検査をしたところ身長180センチで体重90キロ、ウエストサイズ95センチで立派なメタボ、しかも高脂血症であり、血糖値も高くすでに軽度の糖尿病であると告げられました。
 先生からは「このままでは近い将来、たくさんの薬を飲まなければならなくなります。まずは暴飲暴食を控え体重を10キロ以上落として下さい。食事は減塩、お酒も慎むように」と、きついお灸を据えられました。
 さて、仏教徒が守るべき基本的な戒めに五戒というものがあり、その中に不殺生戒と不飲酒戒があります。まず不殺生戒、これは「むやみに命を殺してはならない」という戒めです。私は多くの魚や肉を食べた結果としてメタボになったわけですが、「あの食べ物は私が殺したわけではないのだ、全部漁師さんやお肉屋さんが殺したのだ」と言い逃れをすると、それはヤクザの親分の言い分と同じことになります。そうではなく私は毎日毎日、大量の食事を摂ることによって、必要以上の命を奪っては不殺生戒を破っていたのです。
 もう一つの不飲酒戒、これは酒を飲み過ぎるなという戒めです。酒に飲まれない程度なら酒は百薬の長となり薬になりますので、これは「酒に飲まれてはいけない」との解釈でもよかろうと思いますが、私はこれも平気で犯していたのです。
 つまり私が高血圧症になり一生薬を服用することに到った原因、はひとえに不殺生戒と不飲酒戒を守らなかった報いであり、自業自得と言えます。
 五戒とは私たちが戒を守ることなのですが、逆に戒を守っていれば、いつの間にか戒に守られるという利点があると思います。どういうことかと言えば、私自身、病気になってつくづく思い知らされたのですが、日頃から仏教に生きるものとして不殺生戒や不飲酒戒を守り適度な飲食をしてさえいれば、こんなやっかいな病気にはかからず健康な生活を維持できたのにと思いました。つまり五戒を守っていると、逆に五戒が自分を守ってくれるという積極的な世界があるのだなと、遅ればせながら気づいた愚かな私でした。

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