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盆と母の日

(出典:書き下ろし)

rengo08.jpg 3年前の8月末、11年振りにベトナムに渡航しました。その時も同じ時期で、前回も今回も旧暦7月15日をベトナムで迎えました。偶然ではなく、それが目的の渡航でありました。
 ベトナムは臨済宗の寺院が多く、ベトナム戦争中、坐禅を組んだまま我が身に火を点け政府に抗議したのは、臨済宗ティエンムー寺の住職です。当時使用した車が展示してありました。
 お盆の日は夜中も多くの人が寺院へ行き、赤い花ないしは白い花を胸に付けて参拝するのです。以前、その有様を見ていると、女性が赤い花とは限らず、白い花を付けている人もいました。若い方が赤い花を付けるのかなと思って見てみても、白い花を付けた人もいる。赤、白両方を付けた人は無く、必ずどちらかの色を付けて参拝していました。
一体何の規則で色分けをしているのか不明で、ガイドに尋ねた所、「お母さんが存命な人は赤い花を、お母さんが既に亡くなっている人は白い花を付けて参拝する。」と言う事でした。では、父親の生死はどうなるのか問うと、「父親は生きていても死んでいても胸に付ける花の色は関係ない。」というつれない返事でした。
 この話を聞いて、出兵した方が、太平洋戦争の戦地にて亡くなる前に 〝天皇陛下万歳〟 と言ってではなく「お母さん」と言って亡くなって行ったということが思い起こされました。国は違えど、母を慕う思いに変わりはありません。母は偉大なりと。
 約2500年前お釈迦さま在世の時、釈迦十大弟子の一人で神通力に秀でた目蓮尊者が、自身の神通力で亡き母の姿を見たところ、飢えて渇きの地獄世界に落ちており、何とか母を救う方法がないものなのかとお釈迦さまにお願いしたところ、7月15日に食物と水を供え有縁無縁に至るまで供養すれば救われるであろうと説かれ、その行いの功徳によって無事、目蓮尊者のお母さんは救われ、このことが今日の盂蘭盆(お盆)の始まりとされております。

 『父母恩重経』には、父母に十種の恩があることが説かれていますが、この多くが主に母の恩に当たるものです。その中の一つに <究竟憐愍(くきょうれんみん)の恩> というのがあります。

生きている間は、子を護るためなら自らの命を捨ててもいいと念じ、死後にも、子の身を護ろうと願う。

 ベトナムにも日本と同様に、「母の日」「父の日」がそれぞれ5月第2日曜日、6月第3日曜日にあるそうですが、もう1日、「母の日」があるそうです。それが旧暦7月15日です。それ故に、皆胸に花を付け母の恩に感謝を込めて参拝するのだそうです。
今年は8月24日の地蔵盆の日が旧暦7月15日となっております。母への思いを込めて盆を迎えるのも如何なものでしょうか。

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