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猛暑日 ファイト!!

(出典:書き下ろし)

myoshin1008b.jpg 猛暑列島という言葉がぴったりな国になってしまいました。私の住む岐阜では連日35℃以上の猛暑日が続き、岐阜県多治見市では観測史上最高の39.4℃という記録が出たそうです。誰に会っても「今年は暑いですねー」と言っていれば反論する人は1人も居られません。年々暑さが増し、この先どうなっていくのか心配になってきますが、天候のことは、情けないかな、私たちではなんとすることも出来ません。
 暑い時には涼しいところ。寒いときには暖かいところにいたいものです。
 中国の曹洞宗の祖師、洞山良价という立派な禅僧に、ある修行僧が質問しています。

 
修行僧 「暑さ、寒さから逃れるのにはどうしたらいいですか?」
洞山  「暑くも、寒くも無い所へ行ったらいいじゃないか。」
修行僧 「その暑くも、寒くもない所はどこにありますか?」
洞山  「暑いときは暑さになりきり、寒いときは寒さになりきることだ。」
『碧巖録 四十三則 洞山無寒暑』

と教えたという話しです。暑い、寒いのことだけを言いたかったのではないでしょうが。
 私たちは暑いときには「暑い暑い」、寒いときには「寒い寒い」と、言っても変わることがないことを口に出してしまうものです。言えば言うほど、その暑さ、寒さにとらわれ、ダラダラとしてやる気が失せるものです。
 暑さ、寒さになりきるといいますがどうするといいのでしょうか。
 昨年の夏の暑い日にお葬式での出来事です。そのお葬式の会場は田舎の公民館でエアコンなどはありません。数台の扇風機が回っていますが、時々生温い風が来るだけで全然涼しくありません。そんな中でお葬式が始まりました。私が導師で他三人の和尚さんとお経を読んでおりますと、隣の部屋からボソボソ、ボソボソと話し声が聞こえてきます。隣近所の方がお手伝いで裏方の仕事をして居られるようです。しだいに話し声は大きくなりお経の声を邪魔する位の大きさになってきました。そうしたら突然もっと大きな声で、「こんなに暑くてはやる気がなくなるなぁー」と聞こえてきました。
 司会者の方がしびれをきらして隣の部屋へ行き「皆さん、静かにして下さい。会場に丸聞こえですよ」と注意されました。その司会者の声も丸聞こえでしたが。そしたら隣の部屋の一人の方が、「俺たち今日は主役じゃないからなぁ」とまた、丸聞こえの大きな声で言われました。その方にとっては自分たちはお手伝いで裏方仕事だからということが言いたかったのでしょう。
 お葬式の主役って誰なのでしょうか?お棺の中の亡くなられた方なのか?喪主の方なのか?それとも導師や伴奏の和尚さんなのか?隣の部屋で裏方の仕事をしてくださる方なのか?弔問に来てくださったかたなのか?
 こう考えてみると分かったことがあります。それぞれが持ち場、持ち場でその時にしなければならないことがあるということです。ということはそれぞれが、その持ち場においては主役ということです。
この持ち場で自分が今しなければならないことを精一杯にすることが、暑いの、寒いの、と言わずに、暑いときでも、寒いときでもなりきって、ダラダラせずに生活する方法ではないでしょうか。
 まだまだ暑さは続くようです。猛暑日にファイトといきましょう。

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