平常心是道 -不変のちから-
(出典:書きおろし)
先日、自分のことを書き記した文章を見つけました。これは5年前の2005年に書いたもので、「ハッピー2010ストーリー」という題です。それにはこうあります。
「2010年8月になったら、私は57歳になっている。一般の人ならば、第二の人生を考える時なんだろうが、職業柄、第二の人生にはならない。というのは私はお坊さんであるから。お坊さんは30、40は小僧っ子で、50でやっと芽が出て、60で一人前になると言われているので、2010年には第二の人生というより、第一の人生、すなわち一人前のお坊さんになれるよう、今以上に頑張っているのではないかと考える」とあります。
その文章の続きには「僕の信念は、お坊さんというのは、人を幸せにする、しなければいけない仕事であるということ。きっとその年には、それに向かって走っている自分の姿が容易に想像できる」とあります。
現代社会は、日々刻々と色々なものが変動しており、それこそ科学技術などは、今日のこの瞬間には素晴らしいものであっても、もう1時間も経てば、いや1分、1秒でそれは、古い理論となってしまうのです。そして時として、今までとは全くの逆説が現われ、学説がひっくり返ってしまうことも、数多く起こっています。
そして情報は日々、膨大な量に及び、中には悪意に満ちたものまでたくさん出回り、人々のこころを蝕んでいます。そして、人間はその量に圧倒されて、その中から善意の情報を選別する能力さえ失ってしまっています。また、殺人、傷害などの暴力事件、窃盗や詐欺などの金銭にまつわる事件など、考えも及ばない事件が多発しております。
それもこれもみんな、この社会が悪いということにしてしまえばそれまでです。しかし、人の文明の進歩と共に、我々人間のこころが壊れかけているのです。
1961年、アメリカにおいて、若き獅子ケネディ大統領が誕生しました。彼はその就任演説の中で、「国家があなたの為に、何をしてくれるのかではなく、あなたが国家の為に何ができるかを考えよう」と民衆に訴えかけ、その場に集まった数十万の観衆のみならず、全米から拍手喝采を受けました。私は、悩める現代の人々に「社会があなたの為に何をしてくれるかではなく、あなた自身が社会の為に何ができるか」を、真剣に考えてもらいたい。そうすることによって、今の状況を打破して、古き良き精神と、新しい技術を持つ、新しくすばらしい日本という国、そしてそこに暮らす素晴らしい人々が、できてくると確信しております。
こころの時代とよく言われます。まず人間としての基本は不変です。不変のもの、それは自分がこの社会を作っているのではなく、自分自身が他人にも優しくする事、すなわち慈悲のこころを常に忘れないということです。そして、今自分があるのは、父母そして先祖があってこそということを、こころに刻んで生活をしていくことです。
こういった当たり前のことを、自然体で生活していける自分自身である事、つまり禅の言葉で「平常心是道といいます。当たり前のことを大切にして日々を歩んでいくということが、いかに大事かをよく考えて毎日を送りたいものです。