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生命の花

(出典:書き下ろし)

 曼珠沙華(まんじゅしゃげ)は、ほぼ秋彼岸の中日頃に咲きます。それで彼岸花というのだそうです。
 「嫁のかんざし」「幽霊花」の他、英語名では「リコリス」「ハリケーンリリー」と、各地に400以上もの異名があるという、人間との付き合いの永い花です。土手に群生する鮮やかな色に、ハッとして眺めることもしばしば。
 なぜ彼岸花は土手やあぜ道に咲くのか、ふと疑問に思いました。辞書で彼岸花を引いてみると、根に毒性があり、モグラよけになるとありました。更には、毒抜きをして飢饉の際の食料にもなったのだとか。それで昔の人が、田畑の縁に植えたのでしょう。ちゃんと人の役に立ち、目も楽しませてくれていたのです。
 多くの人は、花を見て美しいと感じ、気持ちが癒されます。花はなぜ美しいのでしょう?
 私は「無心」に咲いているからだと聞きました。良く思われようとか、きれいに見られようという、余計な計らいがないから、ありのままの美しさがあるのだと。
 忘れてならないのは、そんな計らいのない美しさが、私たち一人ひとりに具わっていることです。その心根と、花の美しさが共鳴し、人は花に見入るのかも知れません。
 柴山全慶老師の詩です。  

花は黙って咲き黙って散ってゆく
そうして再び枝に帰らない
けれども その一時一処に
この世のすべてを託している
一輪の花の声であり
一枝の花の真である
永遠にほろびぬ生命の歓びが
悔いなくそこに輝いている

 私たちはみんな、ご先祖さまから引き継がれた、命の花だと言えます。お互いに喜び合って生きていきたいものです。

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