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さわやかな秋風

(出典:書き下ろし)

 9月になってもまだまだ暑い日が続いています。そんな残暑厳しい日の事でした。
 私のお寺の役員会を明日に控え、役員会用のお茶を買うために最寄りのコンビニへ行きました。20本のペットボトルを購入し、袋を両手に提げてコンビニを出ようとしました。扉が自動ではなく手動でしたから一瞬扉を開けるのをためらっていると、扉近くにいた小学生2、3人がさっと近づいて扉を開けてくれました。そして私の両手の荷物を見て、「うわー、和尚さんも大変ねぇ。お茶をたくさん買って」。「和尚さん、頑張ってね」と励ましの声までかけてくれたのです。
 突然の予期せぬ小学生の親切と励ましの言葉に思わず頬がゆるみ、うれしくなりました。「ありがとう。うん、頑張るよ」と答えて、足取りも軽くお寺へ帰りました。残暑の厳しさも忘れさせてくれた小学生の親切心と言葉でした。一足早いさわやかな秋風でした。
 そして、こんな詩を思い出させてくれました。詩の作者ははっきりせず不明なのですが、『一つの言葉』という詩です。

一つの言葉でけんかして
一つの言葉で仲直り
一つの言葉で頭が下がり
一つの言葉で心が痛む
一つの言葉で楽しく笑い
一つの言葉で泣かされる
一つの言葉はそれぞれに
一つの心をもっている
きれいな言葉はきれいな心
優しい言葉は優しい心
一つの言葉を大切に
一つの言葉を美しく

 日常の思わぬ言葉、何気ない一言も、やはりその人の心がそこにくっついている。冷たい心からは冷たい言葉が、温かい心からは温かい言葉が生まれてくる。だから何気ない言葉も人を傷つけることもあれば、逆に人を温かくすることもあるのですよ、それぞれの心のあり方が大切なのですよ、と呼びかけている詩です。
 また、警句に『言葉は洗って使え』とあります。いずれにしても、日常使う言葉にもう少し気を使いなさい。なによりも心のあり方が大切ですよ、と教えています。
 小学生の親切心と言葉が、わたしの心に一陣のさわやかな秋風となって吹き抜け、自分自身を振り返るきっかけを作ってくれました。
 その日は家族に温かい言葉をかけたことはいうまでもありません。
 私たちの何気ない言葉も、人の心を幸せにするものであって欲しいですね。

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