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省エネと仏心

(出典:書き下ろし)

杓底の一残水 流れを汲む千億人  道元

 禅の大本山永平寺の入り口、竜門の石柱両側に『杓底一残水、汲流千億人』と開山道元禅師のお言葉が刻んであります。道元禅師は、谷川の水を洗面等に使われましたが、柄杓に汲んだ水の半分を必ず流れに返されました。「この水は下流(後世)の人々も使う大切な生命の水です。私ひとりがぜいたくに使うわけにはまいりません。皆が共に尊び合い、使い切らない豊かな仏心が養われますように…」と祈り、お返しされたのです。
 水は万物の根源、根源を絶やさない《省エネルギー》の発想です。それはまた根源を活かす仏の御心です。
 昨年の夏休みのことです。

子:「和尚さん、グループ研究で《省エネルギー》のことをしたいけど、何かヒントありませんか?」
私:「自分たちで実際に、《省エネ》やってみたら?」
子:「そうだ。やろう、やろう!」

 彼らは、無駄なテレビや電灯のスイッチを切る、文房具をおしまいまで使う等々の意見を出した中で、お泊まり会で厳しく指導された《お風呂のマナー》からヒントを得て、《お風呂の沸かし方》を調べることにしました。プロパンガスや電気で沸くまでの時間と水の量、などの関係を調べた立派な研究でした。そのまとめを紹介します。

(1)風呂桶一杯に水を入れ沸かす~沸くのに時間がかかり、燃料(ガス)が多くいる。入るときに溢れてお湯がもったいない。
(2)中くらいに水を入れぬるめに沸かす~時間もガスも節約になるが、体が温まらない。
(3)中くらいに水を入れ熱く沸かす~熱いため水をうめて入る時にあふれることがある。

 これが皆で調べた結果でした。そして最も良い沸かし方が決まりました。

(4)少なめに水を入れて熱く沸かす~早く沸き、自分で好きなだけ埋めることもでき、湯が少ないからあふれることもない。さらに朝から水を入れておけば、自然に温まりもっと節約になる。

 それからはシャワーの使い方が変わり、自ら風呂当番を申し出た子もいたようです。身近な《省エネ》が多くの資源を残すもととなることや、あらゆるものの生命を生かすことにもなることを学んでくれました。きっと今も続けていてくれることでしょう。今から彼らに会える夏休みが楽しみです。
 日々繰り返される洗面、食事、風呂、トイレ等々、とりあえずは、水ひとつをじっくり見つめなおしてみましょう。そしてこの夏、暑いからこそ柄杓一杯の水から省エネをしてみようではありませんか。省エネはケチではありません。慈悲溢れる仏心の実践です!

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