牛乳
(出典:書き下ろし)
「賢い主婦はスーパーで手前に並んでいる古い牛乳を買う」。
これは、先日新聞に全面を使って掲載されていたポスターに書いてあったフレーズです。そのポスターは「環境」というテーマで募集された2006年度新聞広告クリエイティブコンテストで最優秀賞を受賞した作品でした。大きく描かれた牛乳パックにこのフレーズが書いてあり、その横に小さくこう書いてありました。「自宅の冷蔵庫に新しい牛乳と
古い牛乳があれば、どちらから飲みますか?古い牛乳からですよね。賞味期限が過ぎて、棄ててしまうのがもったいないですから。しかし、スーパーでは新しい牛乳を選んで買っていませんか?新しい牛乳から売れていくと、そのぶん古い牛乳は売れ残ってしまいます。日本では毎日約2000万人分の食料が、賞味期限切れなどの理由で棄てられています。できるだけ、売り場の手前にある古い牛乳を買いましょう。飽食や贅沢を見直すことで、食料輸送や焼却処分時の環境負担を減らすことができます。ムダを減らして、CO2排出量を減らしましょう」とても具体的でドキッとさせられるポスターでした。
スーパーで商品棚の奥にある新しい商品を取る買い方を、私達はいつの間にか「生活の知恵」として身に付け、それを賢い買い方だと思ってしまっています。古い物から買った方が無駄にならないということは誰もが分かっているはずなのですが。ついつい自分さえよければいいという身勝手な考えや行動をとってしまい、それが自然環境や他の生き物にとって多くの問題を生み出す原因となってしまっています。またそれはめぐりめぐって自分自身の首を絞めてしまっています。私達は自分の考え方を少し見直す必要があるようです。
自分を大切にするように他も大切にできる、自分以外の人やものにもやさしさや思いやりを持つことができる。そんな心を「智慧」といいます。同じ「ちえ」でもこちらは私達に生まれながらにして備わっている仏様のちえ(仏智)なのです。
現在、私達はあまりに自分のことばかりを考えてしまっていてこの大切な心を忘れてしまっています。本来誰もが皆もっているはずの。このポスターを見て私もこの心を思い出すことができました。
「たかが牛乳1本のことで」と思われるかもしれません。しかしこんな日常の何気ない一つ一つの積み重ねが、実はとても大切なのではないでしょうか。「もったいない」という気持ちで自然と一番手前の牛乳に手を伸ばせるようになった時、本当に賢い買い方が出来たと言えるのです。優しい仏様の心を持って・・・