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お盆

(出典:書き下ろし)

 夏になり、暑くなってきました。凉しい風や冷たい飲み物などがうれしい季節です。
 お盆の季節ですね。お盆とは、夏の休暇時期の呼び方ではありません。正しくは、「盂蘭盆(うらぼんく)」という仏教の大事な宗教行事です。一般に、七月十三日の夕方に始まり、十五日か十六日に終わるとされています。地方によっては、旧暦によって八月に一月遅れのお盆を行います。八月盆の地域も沢山あります。この「うらぼん」とは、「盂蘭盆経」という経典にもとづく先祖供養の行事です。
 この「盂蘭盆」の行事は、古来中国において盛んでした。今から千四百年前、推古天皇の頃に日本でも始められたと言われています。その頃は、宮中の行事として行われていましたが、やがて、江戸時代になると一般化され、定着しました。民間信仰とも一緒になって、現代に続いています。
 お盆休みと言って、なにか季節の休暇の名称のように思いがちですが、お盆は御先祖をしのび、その報恩の思いを持ち、今日の自分を感謝する時です。
 お盆には、地獄の釜の蓋が開くとも言われていますので、お寺でお盆の行事があります。この時にお墓参りに行くのも、恩を忘れず、感謝の気持ちを表わすためです。お盆には、その家のご先祖が自宅に帰ってくるので、迎え火や送り火という火を焚いて、家にご先祖をお迎えします。大都市では省略する所が多いですが、地方では今でもきちんと、作法をしている所がまだまだあります。たとえば、有名な京都の大文字焼も送り火の行事です。
 家の玄関やお墓でささやかな火を焚いて、その火や煙に乗って、ご先祖が家に帰ると伝えられています。また、お盆の終わりには、反対に送り火を焚くのです。
 禅のお話に、中国の唐の時代、趙州(じょうしゅう)和尚という禅僧がいました。その趙州和尚のところに、ある日、(さい)郎中(ろうちゅう)という長官が訪れて来て、次のような問答を交わしました。
「あなたのような立派なお坊さんでも、やはり地獄に堕ちるのですか?」
蓮「もちろん、ワシが真っ先に地獄に入る」
「立派な和尚さんが、またどうして地獄に入るのですか?」
「ワシが地獄に入らなかったら、あの世であなたと会う事ができるのか」
 お盆は、地獄に堕ちた人々も、極楽に入っている人も、平等に救う仏教の行事です。しかし、今の自分の生き方が、この世の地獄・極楽を決め、また、あの世の心のありようも決めるのです。今日の自分を感謝し、仏教の教えを学び、仏教的な生き方をしましょう。
 幸福や不幸の人生の大波を乗り切る為にも、仏教はあなたのお役に立ちます。今の自分を反省し、仏教に親しむ日が、お盆の時なのです。

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