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いつでも、どこでも、誰でもできるボランティア活動

(出典:書き下ろし)

 こんにちは。今日は、「いつでも、どこでも、誰でもできるボランティア活動」と題するお話のプレゼントをさせていただきます。
 もう十年も前のことになりましょうか。東京の国立劇場で歌舞伎の鑑賞をした時の途中休憩で、トイレ待ちの長い列の中にいた時のこと。誰もが「まだかまだか」とイライラしながら待っていたその時、私のすぐ前に並んでいた八十歳位のご老人が、近くに捨てられていたガムの食べかすを素早く拾ってティッシュに包み、そのままポケットの中へ。そして知らぬ顔。私は、背筋に冷や汗が流れるのを感じました。ガムの食べかすが落ちているのは、私の目にも入っていたからです。「善い行いは進んですぐに実行せよ」という教え、言い換えれば「いつでも、どこでも、誰でもできるボランティア活動」を、このご老人の後ろ姿から強く教えられました。
 唐の時代の、かの有名な詩人白楽天が、人生の大先輩である恩師に「あなたの哲学で最も大切なことは何ですか」と尋ねると、この恩師は答えて曰く、「悪をなすことなかれ、善は進んで実行せよ」と。これを聞いた白楽天が「そんなことは三歳の子供でも知っています」と食い下がると、この恩師は再び答えて曰く、「三歳の子供、よくこれを知るといえども、八十の老翁もこれを行うこと能わず」と。
 言うは易く実行は難し。ごく当たり前のことではあっても、実行するとなると、むずかしいものだということです。一日に一回から始めてみましょう。「一日一回は他人の心を明るくするような行いをしましょう。一日一回できるようになったら一日二回をめざしましょう。どんなことがあっても、他人のこころを傷つけるような言動は慎まねばならぬ」ということでもあります。
カット 左野典子

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