思いやりのこころ
(出典:『法光』平成12年1月号)
お 魚
海の魚はかはいさう。
お米は人につくられる、
牛は牧場で飼はれてる、
鯉もお池で魅を貰ふ。
けれどもうみのお魚は
なんにも世話にならないし
いたづら一つしないのに
かうして私に食べられる。
ほんとに魚はかはいさう。
(『金子みすヾ詩集』 より)
この詩は、近年注目をあびている金子みすずの代表作の一つである。
食卓にのぼったお魚の生命を思いやる心は、私たちにズシンと響いてくる。
何事にも常に相手の身になって考え、奥深いところ(心眼)からあたたかいまなぎしで見つめる時、思わずわきおこってくる世界である。あまりに豊かな暮らしからは感謝の念が生まれにくい。
我がままでエゴ的な世情にあって、とかく私達が忘れているもの、それは、あたたかい思いやり、慈しみの心である。
人間だけに生命があるのではない。石ころにも草花一本にも森羅万象全てに、生命の通じ合いを感じていきたい。
今、私達にとって何が大切なのか、心眼でしっかりみつめ、思いやりの心をもって、あまねく一切に只々尽くしていきたい。
悠久に続く生命の為に。