法話

フリーワード検索

アーカイブ

7歩のあゆみ2

(出典:書き下ろし)

 今からおよそ2500年前のこと、ルンビニ(ネパール)の花園で産声を上げた一人の赤ちゃんは、生まれると間もなく7歩あるいて立ち止まり、天と地を指さし「天上天下唯我独尊」と言葉を発せられたと云う。お釈迦様のご誕生の様子がこのような逸話で伝えられております。
 出産や子育てを経験されてきた方々は、生まれたばかりの赤ちゃんが7歩もあるくわけがないし、ましてや「天上天下……」と言葉を発するわけがないと思われるでしょう。しかし、ここのところにお釈迦様の偉大さが垣間見られます。もちろん作られたお話ですが、その後のお釈迦様の生い立ちと、さらには29歳で出家修行の道に人られ9年間に及ぶ難行苦行の末に、最後に菩提樹の下で坐禅三昧に入られ悟りを開かれた。その教えが現在に至るまで綿々と伝えられ、仏の教え(仏教)としていただいております。ここのところが7歩あるかせ天上天下と言わしめたところで、その偉大さをさらに偉大せしめた物語なのです。
 それにしても、
 「天にも地にも我一人が尊し」
 と、私がこの世で一番偉いのだと解釈されます。これだけ聞いてみますと、お釈迦様という人はなんと倣慢な人だと思われる人が多いと思います。しかしこの言葉の中には大事な意味が含まれております。
 現在この地球上の人口は60億人とききますが、私というこの人間は地球上広しといえども、たった一人しかいない私なのです。だからこそ私は尊い、私の命は大切にしなければならない。ならば隣の人はどうかと尋ねたら、隣の人もまたこの世でたった一人しか存在しない隣の人なのです。この世の全ての人々はこの世でたった一人しかいない人々ばかりなのです。
 自分の命を大切に他人の命も大切にというところが、仏の教えの根本なのです。
 「天上天下唯我独尊」
 じっくり味わってみて下さい。

Back to list