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子どもの日の贈り物

(出典:『花園』平成9年5月号)

 新緑が眩しく自然の生命力に、活力を感じる季節です。
 「感動することができる子どもは想像力豊かで、感動と豊かな想像力は音楽にも、何より大切なのです」
 子どもたちの心を動かす体験のお手伝いを一生の仕事と考えて、子供合唱団を作られた声楽家の茂手木節子さんの子育て体験の一部を紹介します。

「合唱団の出演のため北海道に渡る際、飛行機に乗ることは大変な感動であろうと思って、夏休みに入った小学校一年生の息子を連れて行きました。たしかに喜びました。
 そして、学校に提出する作文に『一番楽しかったことは、飛行機に乗ったこと』と書くだろうと思っていたのに息子は『あさがおの花が咲いたこと』と書いたのです。
 学校からもらってきた種を、自分で播いて、楽しみに育てて、花が咲きそうになると、朝暗いうちから起きて眺め、ほんとうに咲いた朝には、「ヤッター ヤッター」と叫びながら家中を走り回りました。とるにたらないほどの小さな白い花でした。
 物が出来上がるまでの過程を自分で体験すること―これが感動であることに、気づいたのは、ずっとあとからでした。」

〔はじめにわらべうたを・茂手木節子〕

 こころは、人格に触れ感動するたびに、成長するといわれます。子どもは、仏さまの智慧を頂いて生まれ、身近な大人から生き方を学びます。

ことばをつつしみ
意いをととのえ
身に不善を作さず
おのれをきよくたもつなら
聖者の説ける道を得ん              〔法句経 二八一〕

 自からを調える精進を忘れず、天地自然に背かない生活を悦べることが、子どもたちへの最も大きな贈り物と気づきます。
 傷づいたこころを癒して、新しい活力を与えてくれるのは、美しい自然です。
 未来の子供の日に、花咲き緑薫る環境を残せるのか、使い古しの建造物の残骸を残すかの選択を迫られているのも、私たち大人ではないでしょうか。

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