元旦のこころ
(出典:『花園』平成6年1月号)
法句経 一番
意は諸法にさき立ち
諸法は意に成る
意こそは諸法を統ぶ
けがれたる意にて
且つ語り且つ行わば
輓くものの跡を追う
かの車輪のごとく
くるしみ彼に従がわん
友松圓諦訳
明けましておめでとうございます。
清々しい新春を迎えられ、新たなお気持で新年をスタートされたことと思います。迎春というのはいつもながら、全く不思議な力がはたらくような気がします。
旧年の様々な思いを一夜で断ち切り、同じ世界にありながら、そのまま別世界に移ったように身も心も改まります。そこで、今年こそはと、志や願いを立てなおして、人生がこれから始まるがごとく新しい出発をさせてくれます。そうしてみると人生は案外自らの気持の持ちよう次第でしょうか。
冒頭の法句経の第一番にあるごとく、釈尊は二千六百年前に「人生はあなたのお心次第ですよ」と明確に示しておられます。諸法とは、この世の個人や社会の、禍福やあり様は、ということです。くるしみや不幸は因縁霊や運命や神仏のせいではなく、全て自らのけがれたるおもいによるのです。また、よろこびや幸せは清らかなこころによってもたらされると、法句経の二番に続きます。
しかし、平常は何かと心の清らかさが保ちにくいものです。そこで年に一度はこうして身辺を整理して、日本中がお正月という環境づくりをして内外清浄な世界を建立しようというのです。すばらしい生活の智慧ではありませんか。元旦ならずとも一日の始まりを迎え、お内仏にお詣りした時、このお正月のこころを思い出して一日のスタートに立ってみてはいかがでしょうか。