降誕会
(出典:『花園』平成5年4月号)
四月八日の花まつりを迎え、皆さまも美しく飾られた花御堂の中におられる誕生仏に甘茶をかけ手を合わされることでしょう。
花まつりはお釈迦さまの誕生日で、特に降誕会といいます。兜率天という天界におられた仏さまが、悩める一切の人々を救わんがために下界に下りて来られたということから降誕といいます。各宗の宗祖さまの誕生日も同じように降誕会とか降誕祭といいます。
お釈迦さまはお生れになって七日目に生母であるマーヤ夫人を亡くされました。そうしたことも原因でしょうか、非常に感受性の鋭いご性格に加えて、世の無常や人々の悲しみを強く憂うるようになられました。
カピラ城の王子という恵まれた環境にあっても常に物質的外面的なことよりも、精神的内面的なことに関心が深まります。やがて出家し、ご修行をつくされて人類を救う方となられたのです。
最近の十八歳から二十一歳ごろのジュニアをイルカ世代というそうです。アンケート調査の結論として、この世代の性格は、動物ならイルカのように感覚が鋭くなかなか賢いというところから名付けたようです。私はイルカより「お釈迦さま世代」と名付けたいものです。ただし、それには感覚・賢さに加えて菩提心が必要です。真理を究めようという願いが大切なことです。
『優婆塞戒経』という仏教徒の心得を詳しく説いたお経があります。やはり冒頭には、菩提心をおこすべしとあり、更にそのための次のような五か条が示されています。
1、善き友に交わっていくこと。
2、腹を立てる心をなくすこと。
3、師の教えに素直に従うこと。
4、あわれみ深い心をおこすこと。
5、精進の心を忘れないこと。
仏教徒だけでなく全人類の幸せを成就していくためにもこの五か条を守り、年を忘れてイルカ世代ならぬお釈迦さま世代になろうではありませんか。