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花のたましい

(出典:『法光』平成12年3月号)

  花のたましい

  散ったお花のたましいは、
  み仏さまの花ぞのに、
  ひとつ残らずうまれるの。
  
  だって、お花はやさしくて、
  おてんとうさまが呼ぶときに、
  ぱっとひらいて、ほほえんで、
  蝶々にあまい蜜をやり、
  人にゃ匂いをみなくれて、
  
  風がおいでとよぶときに、
  やはりすなおについてゆき、
  
  なきがらさえも、ままごとの
  御飯になってくれるから。
                       (『金子みすヾ詩集』より)
               
 蝶々には甘い蜜を、人には(かんば)しい香りを与え、風が吹けば素直に向きを変える。散ったら花びらでさえ、おままごとの御飯となる。やさしいお花のいのちを見事にうたいあげている。何とすばらしいことだろう。
 永い一生の間には、喜びも悲しみもあり、時には病気や怪我に悩まされ、人生のドン底を体験することさえある。
 どんな(えにし)であろうとも逃げずに身体全体でドカッとしっかり受けとめ、常に心田の()やしにしていきたい。まずは素直な謙虚な心をもって、水の流れるように全てを活かしきっていく日々の生活でありたい。そこに、この詩にみられる如く、与えて与えて与えつくす慈悲の心がにじみ出てこよう。
 先日、五十二歳で亡くなった方の二十三回忌法要でのこと。おじいちゃんの顔を知らない二歳と五歳のお孫さんがお塔婆をあげられた。〝おじいちゃんへのお手紙だから″と。
 心うたれます。

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