涅槃図と北枕
(出典:『南禅』平成10年11月号)
月日の立つのが早いことを、1月は「いつ」のまにか、2月は「に」げる、3月「さ」らさら、4月は「し」らぬま、5月は「ゴ」ロゴロと過ぎて行くと母から子供の頃によく聞かされました。
新しい年を迎え、神社仏閣へ初詣でをして出合う人々に、「おめでとうございます」といっている間に早や2月となり、節分が済みますと15日は各お寺で、涅槃会が厳修されます。ところによっては、3月15日前後におこなわれるところもございます。
本堂には大きな涅槃図が掛けられ、その図には人や鳥やけだものなど、みんな嘆き悲しみ泣き伏しているのをご覧になったことがあると思います。
35歳のおん歳より45年間、1日として席の暖まることなく、当時印度8ケ国くまなく法を説かれ、宇宙の真理を、人間苦の解脱を示されたのであります。
永遠にして不滅の光明を私達にお示し戴いた仏陀、釈尊のご命日が涅槃会であります。私達は至心に合掌礼拝し、その御徳を偲ばねばなりません。
仏陀のご臨終の様子が示されているのが、この大きな涅槃図であります。
中央には、お釈迦様が右脇を下にして、頭を北に、お顔は西を向き、両足を軽く重ねて手枕で休まれるお姿が描かれております。
東洋では、東西南北何れが上位かと申しますと、北が上位になります。昔、天子様を警護する侍を北面の武士と申しました。
人間の身体には、ごく弱い磁気が流れています。磁気が北を指す如く人も北を枕にして寝ますと、磁気の通りが良く安眠できるのです。肩や首のコリに磁気ネックレスやピップエレキバンを張ると楽な気がします。
昔から頭寒足熱と申しますが、私は中学2年生の時に京都のお寺の小僧となりました。
家にいる時と違い夜布団は冷たく、足も冷えているのでなかなか眠れません。頭は透間風で寒いのですが、布団の中で足と足をこすり合わせている内にいつしか眠りについたことが度々ございました。
北枕は亡くなった人がするもので縁起が悪いといわれますが、それは迷信です!
修行時代老師様のお供をして、旅先で布団を敷く時にどの方角に枕を持っていったら良いか分からず、おたずねしましたら老師様は、「東貪、西福、南短、北長、と覚えておきなさい」と教わりました。以来30数年私は、北を枕にして毎日寝ております。子供達も部屋の都合で北か西を枕にして寝ております。
釈尊がお亡くなりになったので、弟子達が北枕にしたのではありません。釈尊自ら北を枕に床をのベさせ、お休みになったのです。