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(出典:「瑠璃燈」37号)

自治会長を拝命し、夜間巡回(夜回り)の防犯活動に取り組んでおります。その結果でしょうか、小生の地元は岐阜市内で窃盗犯軒数が一番低い地域であります。夜回りで気づくことですが、夜空の星が大変綺麗なことです。小生が思うに窃盗犯軒数が低く星が綺麗なことは、田舎であることが一番の理由かもしれません。そんなわけで、今回は「星」を取り上げます。
「星」の本字は「曐」、俗字は「皨」で、形声文字(意味を表す部分と音を表す部分を組み合わせて作られた文字のこと)です。「晶」(ほしの象形)+「生」(草木が地上に生じる象形)からなり、音符「生(せい)」=「清(せい)」(清い、澄んでいる)から、澄んだ光を放つことを意味する「星」という文字が出来ました。ですから、夜空に輝く天体の星(ほし)を意味します。この他には、星霜という言い方から年月・歳月、勝負の世界で白星(○☆ 勝ち)・黒星(●★ 負け)の星、重要な地位の人の巨星・将星、目標とするものの目星などがあり、警察用語では犯人・容疑者を意味します。
一般的に星は、点状に輝く天体で星座を形成する恒星を指しますが、広義では恒星・惑星・衛星・彗星等を含む場合もあります。ちなみに英語では、恒星はスター(star)、惑星はプラネット(planet)、衛星はサテライト(satellite)と呼びます。
小生は夜空の星を見ると、私たちの命が輝いているように感じます。実際、私たちの命は宇宙の誕生から続いている存在であり、銀河系、太陽系、地球という星々から受け継いでいます。地球上では、民族・言語・宗教・国家・男女など、それぞれ異なるルーツを持ち、各々が地上で光輝く存在ですが、辿れば一つの宇宙に繋がります。
私たちは、夜空の星のように有名で目立つ存在が大好きです。つまり世間やテレビで活躍する人、社会的・経済的・名誉的に成功した人に目が行きがちです。そうではなく、本当の星は地上のあちらにもこちらにもあり、身近なところにいる素晴らしい人という星の存在に気づいていないだけです。誰もがみんな星で、たとえ死ぬまで陽が当たることが無くても、平凡な人生であったとしても、何らかの特技や特徴を持つプロフィッシュナルな星です。
これは三十年以上前の話ですが、某老師が病で倒れ、寝たきりで口のけない状態に陥りました。最終的には療養病院で亡くなりましたが、病院の関係者から、死ぬ間際まで某老師の寝たきりの姿に、何とも言えない徳というか、厳かというか、誰一人介護する側が嫌な気持ちにならなかったという話を聞きました。某老師の眼の輝きに感じ入る部分があったのでしょう。おそらく某老師の修行による人徳なんでしょう。

私たちが徳を積むことは難しく、大変時間が掛かると考えがちです。真の徳、本当の幸せは、好き嫌いの選り好みをせず、自分自身に対して磨きを掛けることです。氷の星を掴むのではなく、尊敬や目標とすべき星を掴んで、その星を時間と労力を掛けて見習うことです。誰もが「地上の星 ☆」ですから。

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