WEB版 絵解き涅槃図
フリーワード検索
用語から選ぶ
登録記事一覧
- 〔法話〕涅槃会―おのれのよるべ―
- 〔法話〕涅槃会に思う
- 〔法話〕涅槃会・西行・明恵
- 〔法話〕涅槃の日に―お釈迦さまに魅せられて―
- 〔法話〕遊行
- 〔法話〕本当の自分が見えますか
- 〔法話〕仏法にあうことの大切さ
- 〔法話〕敵は煩悩地にあり
- 〔法話〕尊きいのち
- 〔法話〕生きざま 死にざま
- 〔法話〕人の音せぬ暁に
- 〔法話〕寂かな心
- 〔法話〕死=志
- 〔法話〕最上の幸せ「涅槃」
- 〔法話〕厳しさ寒さのなかで
- 〔法話〕戒を尊ぶ
- 〔法話〕ナマステ
- 〔法話〕お釈迦さまのご入滅―自灯明 法灯明―
- 〔法話〕お元気ですか
- 〔法話〕涅槃会―死をみつめよう―
- 【解説】釈迦如来
- 【解説】阿那律尊者
- 【解説】阿泥樓駄(あぬるだ)
- 【解説】摩耶夫人
- 【解説】観世音菩薩
- 【解説】耆婆(ぎば)
- 【解説】阿難尊者
- 【解説】迦葉童子
- 【解説】帝釈天
- 【解説】難陀龍王・跋難陀龍王
- 【解説】阿修羅
- 【解説】執金剛神・密迹金剛神
- 【解説】迦樓羅
- 【解説】緊那羅(きんなら)
- 【解説】摩睺羅
- 【解説】純陀(チュンダ)
- 【解説】速疾鬼
- 【解説】老女
- 【解説】目連尊者
- 【解説】犀(さい)
- 【解説】象
- 【解説】猫
- 【解説】虎と豹
- 【解説】獅子
- 【解説】娑羅双樹
- 【解説】衣鉢袋
- 《法話》阿難尊者 1
- 《法話》阿難尊者 2
- 《法話》観世音菩薩
- 《法話》帝釈天
- 《法話》摩耶夫人
- 《法話》目連尊者
- 《法話》老女
- 《法話》耆婆(ぎば)
- 《法話》純陀(チュンダ)
- 《法話》速疾鬼
- 《法話》阿那律尊者(アヌルダ)
- 《法話》跋難陀龍王・難陀龍王
- 《法話》阿修羅
- 《法話》迦楼羅・摩睺羅
- 《法話》象
- 《法話》虎と豹
- 《法話》犀
- 《法話》獅子
《法話》跋難陀龍王・難陀龍王
涅槃図において「跋難陀龍王・難陀龍王」は、お釈迦様が眠られている宝床より右手に、龍が人物に巻き付く姿で描かれ、異彩を放っています。
龍王は、水を司る鬼神とされ、雲を呼び雨を降らせると言われております。龍といえば妙心寺の法堂を始め多くの御堂に描かれており、お参りに来る者達に法の雨を降らせると言われています。しかし、時に嵐を呼び、雲を呼び、雨を降らせる龍王でさえ、お釈迦様の臨終に際しては、自らも涙を流して悲しんでいるのです。
龍王は水を司るとされておりますが、我々においても水は非常に大切です。現に、私達の身体の60パーセントは水で出来ており、水なしでは生きていく事は出来ません。私達が雨だれの音や小川のせせらぎといった水の音を聞くと、何故か心がふと落ち着くのも、我々の身体に流れる水が共鳴しているからではないでしょうか。
私達は、慌ただしい毎日の生活に追われ、時に悩み時に苦しんだりします。このような時には、色々な所で身体の巡りが悪くなり、体調を崩したり心が不安定になったりします。言わば身体や心が、水たまりの状態になってしまっているといえるのではないでしょうか。水は天から大地へと降り注がれ、川となって流れ命を育み、また天にかえっていきます。この大きな自然の中での循環があるからこそ、地球が誕生して以来、決して絶えることなく続いて来た命があるのです。
亡くなられたお釈迦様の側で涙を流す者達は、深い悲しみの中にあり、正に心と身体の循環が止まってしまっている状態だと言えます。しかし、生きとし生ける全ての命の根源となる水を司る龍王は、お釈迦様を亡くした悲しみに暮れながらも、お釈迦様の残された法の雨を降らせる事で、多くの悩み苦しむ者達を救っているのです。
皆さんも雨音や小川のせせらぎの中に龍王の心を感じ、心と身体の水たまりを小川のせせらぎに変えて、命の営みを感じてみては如何でしょうか。
桐野 祥陽(京都・大泉寺住職)