WEB版 絵解き涅槃図
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〔法話〕お釈迦さまのご入滅―自灯明 法灯明―
二月十五日は、涅槃会であります。教えの父お釈迦さまが、クシナガラの郊外、沙羅双樹のもとで八十歳の生涯を終えて涅槃に入られたご命日です。
八十歳の老齢を迎えられたお釈迦さまは、死期の近きを予感され、生まれ故郷のルンビニに向かって北上し、村々で伝道しながら、クシナガラに到着されました。折しも鍛冶屋のチュンダの供物をいただき、激しく体調をくずされました。お詫びをするチュンダを慰め、多くのお弟子さまの中、多聞第一と呼ばれた阿難尊者(あなんそんじゃ)の「真の灯、依り処」の質問に対して、最後の説法をお説きになりました。
弟子たちよ、おまえたちはおのおの自らを灯火(ともしび)とし、自らをよりどころとせよ、他を頼りとしてはならない、この法を灯火としよりどころとせよ、他の教えをよりどころとしてはならない
自灯明、法灯明の教えであります。
「自灯明」自己の真の灯明(ともしび)は、正覚(しょうかく)の智慧、慈悲心である。無明、闇夜を照らす灯明であり、依り処です。「法灯明」法とは正覚の真理・道理です。この法に帰依することによって、一切の我欲我執を離れ、真実・安心して生きることが出来ます。
正覚の真理は、諸行無常―つくられたるもの、うつりゆくはこれ初めの真理なり。諸法無我―この世に在るものは、ひとりに非ず、これ次の真理なり。涅槃寂滅―おのれなきものにやすらいありとはこれ終りの真理なり。 三法印
汝等(おんみら)よ、吾が終りはすでに目前に逼(せま)れり、されどいたずらに悲しむこと止めよ。吾が壊身(えしん)を見るものは我を見るに非ず。正法に目醒(めざ)むるものこそ、つねに吾を見るものなり。われ永久(とわ)の涅槃に入らんとす。これ最後の教えなり。
説き終ったお釈迦さまは、双樹のもと満月冴える夜、北面に頭を置き右脇を下にして静かに涅槃に入られました。
お弟子さまをはじめ、国王から庶民、すべての人々、動物にいたるまでお釈迦さまの入滅を悲しみました。涅槃図は、その時のご様相です。
願はくは 花のもとにて 春死なむ
そのきさらぎの 望月のころ 西行
尾関 義昭(京都・江西寺先住職)