WEB版 絵解き涅槃図

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【解説】執金剛神・密迹金剛神


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 執金剛神と密迹金剛神は、もともと仏法を守護する一体の神の分身で、寺院の山門などに安置されるる仁王のこと。しばしば、執金剛神は金剛力士、密迹金剛は密迹力士とも呼ばれ、日本ではそれぞれ阿形と吽形で造像される。
 サンスクリット語では、密迹金剛はグヒヤパーダ・ヴァジュラ、執金剛はヴァジュラ・ダラという。グヒヤパーダと(密迹)は、仏の大法を聞くということ、ヴァジュラ(金剛)とは堅固不壊、ダイヤモンドのように強力な光を放つものの意である。ヴァジュラ・ダラとは、金剛杵を持つ者の意である。金剛杵とは、仏敵を退散させる武器であり、煩悩を打ち砕く菩提心の象徴でもある。もともとバラモン教の主要神であるインドラ(帝釈天)の所持する武器としても知られ、密教では法具として用いられる。
 つまりこの二人は、金剛杵という武器を持ち仏や仏法などを脅かす外敵から守り、戦う役目を担う神である。そのため、東大寺の阿形像、吽形像は非常に恐ろしい顔をしており、身体も仏教に害を与える外敵と戦うためにたくましく鍛えられており、今にも飛び出していきそうな気配をまとっているのである。
 また密教の第二祖とされている金剛薩埵(ヴァジュラ・サットヴァ)も、金剛杵をもっている。サットヴァとは勇猛果敢なこと、という意味である。金剛薩埵は、大日如来の教えを受けた密教第二祖として崇拝され、大日如来と衆生をつなぐ大切な位置にある。執金剛と金剛薩埵、違う神のようであるが、実は起源をたどると同一神格である。密教で取り入れられ、今も多くの寺院の門に、外敵をにらみつけるように作られた執金剛、密迹金剛。彼らの持つ力強さと、煩悩をも打ち砕くその金剛杵、多少神話のような部分もあるかもしれないが、彼らの力を借り、仏法の道を説きすすめてゆきたいものだ。

林 義徳(花園大学学生)