山呼万歳声

禅 語

更新日 2023/08/01
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山呼万歳声
やまはよぶばんぜいのこえ

『床の間の禅語』
(河野太通著・1984.7.禅文化研究所刊)より


 この言葉は前漢の武帝の故事によります。武帝(紀元前141~87)は、正月になると、中国五岳の一つに数えられる嵩山(すうざん)に登って、天下の泰平を祈りました。皇帝が登られるというので、多くの一般庶民も同行いたしました。皇帝が山上で国家鎮護を祈りますと、民衆は天子武帝の長久を祈って「万歳」と叫びます。その叫び声があたりの山々にこだまして「万歳、万歳、万歳」と響き渡って聞こえてきます。

 これを「三たび呼ぶ万歳の声」と書くこともありまうが、おめでたい言葉です。
 山はつねに泰然として崩れることがありません。ことに富士山のような高い山になると、雲海の上にそびえて雄大です。そのゆるぎない姿に「万歳」の声を聞きます。民衆が万歳を唱えると、山がこだましてくる、というだけでなく、万歳を唱えなくとも、あの泰然たる山そのものが「万歳」と叫んでいる。

 そう見る眼があるならば、洋々と水をたたえる太平洋に臨んでも、太平洋が「万歳」と叫んでいる。この地球上のすべてのものが「万歳」と唱え、悠久な宇宙の真理を語っている。すべての存在は宇宙の永遠なる大生命の現われでないものはない。その声なき声を聞く。