白隠禅師シンポジウム【東京会場】のご報告

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 白隠禅師の250年遠諱の正当年にあたる平成29年2月18日(土)、東京都千代田区大手町にある日経ホールを会場に「白隠禅師シンポジウム」が開催されました。「白隠禅師シンポジウム」は、東京、京都、名古屋、福岡と四つの会場を予定しておりますが、その第一弾となります。アカデミックな発表ではなく、広く白隠禅師をご存じない方までご参加いただきたいとの願いからの会場設定となりました。ご講演下さるのは、臨済宗円覚寺派管長・横田南嶺老師と、白隠禅師研究の第一人者である花園大学国際禅学研究所顧問・芳澤勝弘先生のお二人でした。テーマは「白隠さんと私」とし、それぞれ30分ずつの基調講演の後、龍雲寺住職細川晋輔を交えての対談という構成で行ないました。

_MG_1562.jpg 横田老師のご講演は、白隠禅師の代表作ともいえる健康法を説かれた『夜船閑話』について。東京の中心で大自然を感じていくという、大都市東京ならではのお話であったと思いました。白隠禅師が『十句観音経』に、なぜ『延命』とつけたのかを考えさせられるものでありました。

_MG_1556.jpg 芳澤先生は、白隠禅師の漢文語録である『荊叢毒蘂(けいそうどくずい)』について。白隠禅師の著作の中でも最も難解なものの一つとされるものをご解説下さりました。大変難しい内容でありましたが、映像なども交えてとても丁寧にご説明くださり、聴衆の中には興味を持った方もおられたようで、帰られる際に分厚い訓注本を手に取られていたのが印象的でした。

 お二人による対談は、「白隠禅師との出会い」をそれぞれの生い立ちとともにお話しいただきました。管長猊下になられた横田老師と、白隠禅師の研究者となられた芳澤先生との白隠禅師とのご縁を聞かせていただくことができたと思います。円覚寺に伝わる『荊叢毒蘂』もご披露いただき貴重な体験ができました。

_MG_1596.jpg 私が特に取り上げたかったのは、「健康」という語句でした。今でこそ当たり前のように使われているこの「健康」という言葉は、白隠禅師が世に初めて出したと言われています。現代の社会を見てみると、とにかく自分自身の身体と心に多くの注意を払って生活している人がたくさんおられます。その先駆者ともいえるのが、他でもない白隠禅師であったのです。身体の健やかさを「健」とし、心の安らかさを「康」とする。この二つのどちらかが欠けていても成立しない。そして、その健康を手にした私たちは何をしなくてはならないのか? それは「四弘誓願」の実践に他ならないということは、お二人とも共通しておられました。ご参加いただいた方々の心にも、強く訴えられたメッセージであったと思います。

 今回のシンポジウムは、禅の初心者である聴衆に語りかけることに関しても、これ以上ない講師のお二人であり、会場も東京駅近くの、日本経済新聞社のホールという寺院ではない場所でありました。600人収容の会場で400人弱の方々にご参加いただきましたが、折角の機会でしたので、もう少し広報などに工夫をすべきであったと反省しております。今後の大きな課題としたいと思います。

妙心寺派龍雲寺住職 細川晋輔