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三更月照幽窓外 松竹青々碧欲流  『大応国師語録』偈頌「引清軒」 さんこうつきはてらすゆうそうのほか しょうちくせいせいとしてみどりながれんとほっす

『床の間の禅語 続』

(河野太通著・1998.04 禅文化研究所刊)より

05月を表す季節の画像

同じ意味合いの句が並べてあります。閑寂な、静かで、そして清らかな境地です。
 
三更月は照らす幽窓の外
三更は夜更け、夜が更けて人っ子一人通らない、静かな場所に月が皎々と輝いている。家の人は寝静まったのであろうか、静かな家の窓を照らしている。そのままがお浄土だ。現実の、私たちの娑婆世界の景色を歌っているのですが、「どうだ、こんなに素晴らしい地球上の景色があるではないか。そんな世界にいるのに、更に何を求めて、この世界を嫌うのか、よその世界を求める必要などないではないか」というのです。
さて、その静かに月の光を浴びている窓の外に目を転じると、これまた、
 
松竹青々として碧流れんと欲す
雨あがりでもありましょうか、松や竹の緑が月に照らされて、ひときわ色濃く見える。その緑の色の濃いさまといったら、ちょうど水彩絵具でいま塗ったばかりのようで、流れ滴り落ちるような感じがするではないか。松は緑に、竹も緑に、青々としてその緑たるや新鮮に流れ落ちるようだ。そこに月が皎々と、人っ一人、動く物もない静かな家の窓を照らしている。
まさにそれは、白隠禅師の『坐禅和讃』にいう「当所即ち蓮華国」、理想の世界ではないか。自然の美しい景色の中に見惚れて、理想世界のただ中に我れを忘れて没入している境地と受け取ります。