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水和明月流  『五灯会元』巻十九 みずはめいげつにわしてながる

『床の間の禅語 続』

(河野太通著・1998.04 禅文化研究所刊)より

08月を表す季節の画像

流れる水に月の光がさして、流れが輝き映える。月の光と水とが相和して、美しい流れとなって流れる。水は三日月だから嫌だということもない。満月だからずっと映して流れるのを止めておこうということもない。三日月でも満月でも、それを厭わず水は月影に映えて流れる。月の光にとらわれて流れを止めるということはない。

 

時の流れに流される人間のように、月影が流れて行くということはない。水だけを流して、月影はそのまま動かずにそこにある。水のほうも、きれいな月がいま映っているからといって、流れを止めてしまって水としての節操を失うことはない。明月も無心、流れる水も無心。無心なものと無心なものとが縁をもって、そこに美しい世界を現出している。

「水は明月に和して流る」。お茶室でいうならば、客も無心、亭主も無心。無心な亭主と無心な客とが、茶室という場を縁として和敬清寂の世界をそこに現出する。和敬清寂の時をもちながら、その時が流れていく。そういうところを歌った言葉です。