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風吹碧落浮雲尽 月上青山玉一団 『五灯会元』巻十七 かぜへきらくをふいてふうんつき つきせいざんにのぼるぎょくいちだん

『床の間の禅語 続』

(河野太通著・1998.04 禅文化研究所刊)より

09月を表す季節の画像

 碧落は青空、大空のこと。風が大空を吹き渡って、今まで空を覆っていた浮雲がすっかり吹き尽くされ、玉のような月が皎々と青山の上に顔を出した。

清らかな秋の夜の光景を歌いながら、そこに一つの禅の悟りの風光をダブらせているのです。迷いの雲が吹き尽くされれば、そこに自ずから何もしなくてもまん丸とした心の月が輝き現われる。

 同じ意味合いの言葉に、「雲は万嶽に収まり、月は中峰に上る(雲収万嶽月上中峰)」というのがあります。
雲が山々の谷間におさまってしまうと、山の上に月が顔を出す。これも秋の美しい月の輝く夜の景色を歌っています。要らざる思いが静かにおさまると、心の月が自ずから現われて、美しい心の世界がそこに出現する。美しい心の安心の境地というものは、求めずとも、要らざる思いの雲というものがおさまりさえすれば得られるのだ。人間みんな、立派な境地の心の持ち主なのだということです。