
王維の「竹里館」という詩の言葉です。
独り坐す幽篁の裏 独坐幽篁裏
琴を弾じて復た長嘯す 弾琴復長嘯
深林人知らず 深林人不知
明月来たって相照らす 明月来相照
独り坐す幽篁の裏、琴を弾じて復た長嘯す―― 一人静かな竹藪に坐って、琴を弾じ歌を歌う。
深林人知らず、明月来たって相照らす―― この林を誰も知らないが、明月だけは夜空に輝いてここを照らしてくれる。
一人、自然を友として楽しむ幽玄な境地です。こういう楽しみも人生にはあるわけです。近ごろは雑踏とか騒々しい所へ出かけて行って楽しむ傾向がありますけれども、やはり、孤独な楽しみというものも知らないと、人間的成長というのはなかなかないように思います。賑やかで騒々しい、それだけが楽しみの場というのでは、いかがなものでしょう。近年はそういう孤独な楽しみというものを楽しむことが少なくなっているように思うのです。